ジム・ロジャーズの警告をどう受け止めるか

 

ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並ぶ世界3大投資家の一人、ジム・ロジャーズ(敬称略)が先週来日し、各種メディアとのインタビューで「30年後の日本はたいへんなことになる」「もし私が10歳の日本人だったとしたら、日本を離れて他国に移住する」(東洋経済Onlineなど)と日本の将来に警告を発した。

 

親日家を公言するロジャーズが日本の将来を悲観する理由は2つ。一つは、国の借金が増え続けていること、もう一つは、人口減少の一方で移民の受け入れを拒否し、労働者がいなくなってしまうことだ。当面の間はともかく、長期的には国債を国内で消化できなくなり、財政破綻することが確実だと言う。

 

個人的には、2点とも本コラムなどで披露してきた見解と同じで(「外国人労働者をもっと増やすべきだ」「国債暴落が議論にならない不思議」を参照)、まったく大賛成だ。「よくぞ言ってくれた」と思う。

 

ところが、ロジャーズの警告に対する日本国内の反応は、今回が初めてではないという点を割り引いても、極めて鈍い。政府は、完全無視を決め込んでいる。日ごろは「アベノミクスで日本経済は絶好調」とヨイショしている御用学者も、「日本は破綻しない」と楽観する経済評論家も、(今のところ)正面から反論していない。ネット世論も、私のように賛成するでも、「何を言ってやがる!」と猛反発するでもなく、いたって静かだ。

 

ロジャーズから楽観論を全否定された政府・学者・評論家は、なぜ反論しないのだろうか。おそらく、明確なビジョンとロジックを持ち合わせていないからだろう。

 

国の借金について、悲観論者が財政再建のために消費税増税などを主張すると、楽観論者は「消費税増税で景気が後退してしまう」などと批判する。しかし、増税なしでどうやって財政危機を回避するのかは示さず、「家計の金融資産があるから大丈夫」「これから高い経済成長をするからGDP比で債務残高は大きくならない」といった希望的観測を繰り返すばかりだ。

 

労働者の減少について、悲観論者が移民受け入れなどを主張すると、楽観論者は「外国人労働者が増えると治安が悪くなる」などと批判する。しかし、外国人労働者を受け入れずにどう労働力不足を解消するのかは示さず、「外国人労働者に頼らなくても現在の生活を維持できる」「将来AI・ロボットが進化すれば労働者がいなくても何ら問題ない」といった楽観論・空想論で煙に巻く。

 

楽観論者は、悲観論の主張の問題点を指摘し、希望的観測を示すだけで、「日本は将来こうありたい」というビジョンや「こういう手を打てば大丈夫」というロジックがない。そのため、ロジャーズから「このままだと日本は破滅」と言われて、まともに反論できないのだろう。

 

それにしても、30年後も現役バリバリで働いている若い世代から、賛成・反対を問わずロジャーズの警告への反応がないのは、どうしたことだろうか。

 

各種世論調査によると、若い世代ほど現在の生活への満足度が高い。一昔前の就職氷河期と違って人手不足で就職率が高いことが背景にあるらしいが、さてこの“小さな幸せ”がいつまで続くだろうか。投資とは縁の薄い若者がロジャーズのことを知らないというだけなら良いのだが、もしも「そんな遠い未来のこと関係ないよ」「今が楽しければ良いじゃん」と考えて静観しているとすれば、たいへん残念なことである。

 

(2019年2月25日、日沖健)