地球から最初に消滅するのは韓国ではなく日本

 

韓国で少子化が急速に進み、問題になっている。韓国の合計特殊出生率は元々1.2前後と低かったのだが、文在寅大統領が就任した2017年から急低下し、2018年はついに人類史上初めて1.0を下回る0.98を記録した。2019年には0.88程度まで低下し、史上最低をさらに大幅に更新する見込みだ。

 

韓国では不動産価格・結婚費用が高く、都市部を中心に結婚・出産・子育てがしにくい社会環境にある(ソウルの合計特殊出生率は0.69、ちなみに東京は1.21)。さらに、文在寅大統領が最低賃金を約29%も引き上げたことから、自営業者の破産・中小企業の倒産が続出し、若年層の失業率は20%を超える。若者は「非正規しか仕事がなく、生きていくのがやっと。結婚・出産どころではない」という絶望的な状況だ。

 

英オックスフォード人口問題研究所が2006年に「人口減少により消滅する最初の国は韓国」と発表し、大きな波紋を呼んだ。その後も、国連人口部やサムスン経済研究所など韓国内外の機関が同様の分析を公表している。消滅の時期は22世紀と予想されているが、このところの合計特殊出生率の急低下によって、かなり早まるのではないかという見方が増えている。

 

日本人は韓国のことが嫌いなので、このニュースを聞いて拍手喝采だ。ネット掲示板だけでなく専門家の間でも「それ見たことか」「文政権は反日とかやってる場合じゃないだろ」などと突き放した、他人事の論調が多い。しかし、地球から最初に消滅するのは韓国ではなく、われわれ日本ではないだろうか。

 

日本では少子化対策が功を奏さず、合計特殊出生率は1.42と低迷している。日本の総人口は2008年の12,808万人をピークに減少し始め、国連人口部によると2100年に7,500万人まで減る。こうした公表数値を比較すると、最初に消滅するのは韓国で、日本はそれよりもかなり後である。

 

ただ、韓国には北朝鮮という切り札がある。北朝鮮の疲弊しきった経済、金正恩の不健康そうな体型を見ると、これから20年以上、北朝鮮が存続するとは思えない。早ければ来年、遅くとも2050年までには韓国が北朝鮮を併合するだろう。南北統一が実現すれば、北朝鮮の若い女性が大量に韓国に流入し、結婚・出産ブームが起こる。南北統一は政治的・経済的には様々な苦難を伴うだろうが、こと少子化・人口減少の問題については大きなプラスだ。

 

その他に日本よりも合計特殊出生率が低いのは、台湾(1.17)・香港(1.20)・シンガポール(1.20)・イタリア(1.35)だ。ただ、台湾・香港は国家ではないし、シンガポール・イタリアは移民を受け入れている。子供を産みたくない、移民はまっぴらごめん、と言っている日本が、普通に考えて地球から最初に消滅するのではないだろうか。

 

地球から最初に消滅することを運命として受け入れるのも、一つの選択ではある。しかし、この選択が嫌なら、現在政府が進めている働き方改革だけでなく、移民の受け入れ・地方への人口分散・若年層への所得再分配など、抜本的な対策を進める必要があるだろう。対策は待ったなしだ。

 

以上、先週の「少子化にどう対応するか」に続いて、少子化・人口減少という日本人が過去40年以上も議論を避けてきた問題について考えてみた。今年は、オリンピックで8月にナショナリズムが最高潮に達し、9月以降に高揚からふと我に返り、「100年先にわが国は存在するのだろうか」と思いをはせる。日本は存続するべきなのか、存続するためには今何をするべきなのか、国民を挙げた議論が展開されることを期待したい。

 

(2020年1月6日、日沖健)