読売ジャイアンツ・阿部慎之介監督の事件(と呼んで良いものか)では、暴行を受けた長女が母親でも友人でもなく、まずChatGPTに相談したことが話題になっている。
報道番組やSNSでは、長女の人間関係の希薄さを嘆く声を多く見受けるが、これはいかがなものか。個人的には、まずChatGPTに相談したという長女の行動は大いに納得できる。困りごとを知人など人間に相談すると、以下のような限界や不都合があるからだ。
① 相談相手が背景・事情や相談者の考え方などを知らず、頓珍漢な答えしか返って来ない。
② 専門性が高い相談事の場合、相談相手の知識・理解力が足りず、薄っぺらい答えや間違った答えしか返って来ない。
③ 相談相手が自分の考えを押し付けてくるかもしれない。下手すると説教されるかも。
④ 重大なことを他人に打ち明けるのは恥ずかしい。
⑤ 秘密や不都合なことが他人に広まってしまうかも。
⑥ いつでも適切な時に相談できるとは限らない。
全幅の信頼を置ける相談相手なら、②⑥以外はさほど問題ない。ただ、多くの人にはそういう適切な相談相手がいない。一方、ChatGPTは、①が大きな弱点だが、それ以外の②~⑥は問題ない。
なお、プライベートの問題では、話すことで安心したいと思って相談をすることが多い。信頼できる人に寄り添ってもらうと、たしかに大きな安心感が得られる。ただ、信頼できない人に塩対応されると、返って不安・ストレスが増す。その点、ChatGPTは必ず「たいへんな状況ですね」と寄り添ってくれて、当たり外れがない。
こうして比較すると、相談相手として人間よりもChatGPTの方が圧倒的に優れている。相談者の特徴や考え方などを深く知らないとアドバイスできないという特殊なケースを除いて、大事なことはまずChatGPTに相談するのが合理的だ。合理的な若い世代を中心に、今後は“ChatGPTファースト”(?)が一般的になるだろう。
“ChatGPTファースト”は、ビジネスの世界でも広がりそうだ。現在は、職場で困ったことがあったらまず上司に相談するべきだとされるが、①を除くすべての点で、上司よりもChatGPTの方が圧倒的に優れているからだ。ビジネスでは、②と③(「上司に説教されたくない」という心理)がとりわけ重要だ。
数年後の日本企業の職場。トラブルに直面した部下がいきなり上司に相談した。上司は「俺は忙しいんだ。まずChatGPTに相談しろよ」と言った。部下は「失礼しました」と謝り、上司に「ところで、何をしていて忙しいんですか?手伝いましょうか?」と尋ねた。部下のトラブルシューティングばかりしていたその上司は、答えに窮した…。
ところで、「相談する」は英語でconsultである。コンサルティングの世界でも、いずれは“ChatGPTファースト”が当たり前になるだろう。クライアントは、困ったことがあったらまずChatGPTに相談し、解決できなかった場合にコンサルタントに相談する。
という時代になったとき、コンサルタントはクライアントにどういう価値を提供できるだろうか。そもそも、コンサルタントにクライアントから相談が来るのだろうか。上司もコンサルタントも、悩みは深い。
(2026年6月1日、日沖健)