コンサルタント独立開業は準備万端型か緊急発進型か

コンサルタントとして独立開業した中小企業診断士の方から挨拶や近況報告をよくいただく。順調なスタートを切る方もいれば、暗中模索という方もいる。前者は油断せずに、後者はめげずに、成功に向かって着実に歩みを進めて欲しい。

コンサルタントの独立開業のきっかけ・経緯は、実に様々だ。綿密に準備し、満を持してスタートを切る人(“準備万端型”としよう)もいれば、会社からリストラされたり、会社が倒産したりして期せずしてスタートを切る人(“緊急発進型”としよう)もいる。どちらが、成功確率が高いだろうか。

準備万端型の方が成功しやすいと思いがちが、そうでもない。たしかに、会社勤務時代と同じくらいの収入を獲得する「準成功」(社会保険や退職金などがないので実際は会社勤務時代より収入減)の確率は、準備万端型の方が高い。しかし、会社勤務時代の2倍以上の収入を得る「成功」の確率は、準備万端型でも緊急発進型でも大差ない。

準備万端型があまり成功しないのは、なぜだろうか。

「これで万全!」と信じていた準備が、実際にはあまり意味がないということだ。無意味な準備の代表例が、“フライング営業”である。管理職や営業職として働いていた人は、よく同僚・部下や取引先に「独立開業するからお仕事をください!」と営業を掛ける。

これに応じて仕事を恵んでくれるのは、コンサルタントに何らかの義理がある人だ。そういう“顧客”は、コンサルタントが退職して義理がなくなると、早々に離れていく。フライング営業は、成果があったとしても気休めにしかならない。

しかも、そういう「義理と人情で取れそうなところから取る」という安易な営業をしていると、コンサルタントとして成功するために最も重要な営業力が身に付かない。これが、準備万端型があまり成功しない理由だ。

一方、緊急発進型は圧倒的に不利だと思われがちだが、大成功を収める人がたまにいる。

緊急発進型は、とりあえず生活していくために、飛び込み営業など遮二無二に営業をかける。来た仕事は「不得意だ」とか、「嫌いだ」とか、「不当に安い」とか贅沢を言わず、手当たり次第に受注する。最初の半年、1年は、十分に受注できずに貧乏暇アリか、安くて面倒くさい仕事ばかりで貧乏暇ナシのどちらかだ。

しかし、その有象無象の仕事の中から、人生を賭けて情熱を持って取り組みたいという天職を見つけ出すことがたまにある。見つけ出した天職で経験を積み、専門性を高め、やがて大きな実績を上げる…。ただし、そういう成功者は例外で、大半は貧乏暇アリか、貧乏暇ナシの生活を続ける。

つまり、準備万端型でも緊急発進型でも、あるいはその中間でも、成功確率は等しく低い。独立開業のきっかけ・経緯は、成功・失敗とほとんど関係ない。大切なのは、独立開業した後、色々な人と知り合い、色々な経験をして、その中から「これだ!」と思う仕事を見つけ出すことができるかどうかだ。

どんな人と知り合うか、どんな経験をするかは、多分に運が作用する。もちろん、ネットワークや経験を増やすよう努力することは大切だが、努力すれば絶対に大丈夫というものでもない。運に身を任せるのが許せない、不安だという人は、独立開業しない方が身のためかもしれない。

 

(2026年5月25日、日沖健)