北九州のソウルフード「資さんうどん」の出し汁の味を巡って、いまSNSが熱くなっている。
1976年に北九州で誕生した資さんうどんを2024年10月にすかいらーくホールディングス(3197)が買収し、全国展開することになった。それ以降、一部のファンから「北九州の店とは違う」「味が落ちた」という声がSNSなどに出ていた。
そして、この4月から、すかいらーく出身者が社長に就任することになった。という報道を受けて、SNSでは「いよいよ資さんうどんが、昔とは別物になってしまう」という騒ぎに発展している。騒動に対し、先週、会社は「経営陣が変わっても味を変える方針はございません」と声明を出した。
まず「味が落ちた」という声をどう受け止めるべきだろうか。
会社側の説明によると、材料もレシピも調理方法も、買収前と同じだそうだ。使用する水は土地によって違うので「微妙なブレはありうる」としている。つまり、まったく同じではないだろうが、ほんの微妙な違いということだ。
失礼ながら、資さんうどんを喜んで食べている一般庶民が、ちょっとした出し汁の違いを識別できる繊細な味覚を持っているとは思えない。少なくとも、そういう超人がたくさんいるはずがない。ということで、「味が落ちた」というのは、オールドファンにあるあるの“思い出補正”であろう。「昔は良かった」というやつだ。
あるいは、味の変化はよくわからないが、「俺はお前らと違って昔から食べている常連だぞ!」とマウントを取りたい常連客かもしれない。どちらにせよ、会社にとっては面倒くさい客である。
外食店は、こういう面倒くさい客も相手にしなきゃいけないからたいへんだな、と思ったところで、「待てよ」と思った。
私は、10数年前に北九州で資さんうどんを食べたことがある。まあまあ美味しかったが、出張先でわざわざ食べるほどの印象はなく、それっきり食べていない。博多に出張する際には、「因幡うどん」をよく利用している。
しかし、今回の騒動を見て、「資さんうどんって、もしかして本当は美味しかったのかなぁ」と思い、さらに「せっかく関東に店が出来たなら、行ってみようかなぁ」と店舗を検索した。
おそらく、私だけではないだろう。まだ資さんうどんを食べたことがない人の相当数が、ニュースやSNSを見て、「へえ話題の資さんうどんって、どんなだろう?」「食べてみたい!」と思ったに違いない。
つまり結果として、今回の騒動は、資さんうどんの知名度を高める絶妙なプロモーションになったわけだ。
ちなみに、私が好きな因幡うどんも「一風堂」を運営する力の源ホールディングス(3561)に2016年に買収された。しかし、「味が落ちた」「別物になった」という声を少なくとも私は耳にしなった。
因幡うどんは全国展開していないこと、買収したのが同じ福岡市の会社だったことなどが、騒動にならなかった理由だろうか。それとも…。
もしも資さんうどんの「味が落ちた」とSNSで騒ぎ始めたのがすかいらーくHDの社員だとしたら、秀逸なプロモーション戦略だ…。力の源HDにはそういう気の利く社員がいなかった…。真相やいかに。
<最後の段落は、あくまでも可能性を指摘しただけなので、誤解なきよう>
(2026年3月2日、日沖健)