自民党大勝で消費税減税はどうなる?

昨日、衆院選の投開票があり、高市人気で自民党が圧勝した。自維政権の政権基盤が強化され、高市首相が政策を推進しやすい環境になった。そこで注目されるのが、今回の選挙の争点の1つだった消費税減税である。

高市首相は、首相に就任する前は消費税率ゼロに意欲を見せていたが、就任後は「物価高対策としては即効性がない」と慎重姿勢に転じた。ところが、中道改革連合など野党が消費税減税を打ち出すと、「食品にかかる消費税を2年間限定で減税する」と選挙公約に掲げた。

選挙が終わり、消費税は今後どうなるのか? 大手メディアやSNSでは、見方が交錯している。

自民党の選挙公約は、「検討を加速させる」という曖昧な表現だった。選挙戦中、高市首相は消費税減税についてほとんど言及しなかった。これらから、公約は単なる「争点潰し」であって実現する気はない、むしろ増税に向かうのではないか、という見方が多い。

一方、公約通りに実施するのではないか、という見方もある。もし選挙公約をあっさり破棄したら、政権支持率が下落し、党内の求心力が弱まる。党内基盤がぜい弱で高い支持率が頼みの綱の高市首相は、この状況を看過できないだろう、というわけだ。

高市首相の胸の内はもちろん分からないが、実施するかどうかは支持率次第であろう。

仮に今後も高い支持率が続くなら、「検討継続中」として有耶無耶にする可能性が高い。安倍首相の後継者を自任する高市首相は、安倍首相が2度にわたる消費税率の引き上げに苦しんだことを鮮明に記憶しているはずだ。減税してまた2年後に引き上げるのは至難の業で、そういう苦難を好んで背負いこむ必要はない。

逆に、支持率が下落したら、政権浮揚のために減税を実施するだろう。少なくとも、本気で検討を加速させる。

足元の国内経済は堅調で、ある程度の賃上げが見込めること、物価も昨年と比べて落ち着くことなどから、当面、支持率が急落するとは考えにくい。ということで、よほどのアクシデントがない限り、消費税減税は有耶無耶になると個人的には予想する。

ところで、個人的に残念に思うのは、相変わらず消費税が政争の具になっていることだ。今回、チームみらいを除く全政党が物価高対策として消費税減税を公約に掲げた。

昨今の物価高は、円安による輸入価格の上昇や人手不足による供給制約によるものだ。消費税率は変わっていないから、原因ではない。問題解決では、原因に対して手を打つのが常道だ。原因でもなく、即効性もない消費税減税に踏み込むのは、大いに疑問である。

消費税は、高齢化で膨張する社会保障の財源である。消費税減税を唱えるなら、穴が開く社会保障の財源をどう手当てするか、という議論が欠かせない。しかし、今回、議論はまったく深まらなかった。

今回だけでなく、消費税は1970年代から国政を左右してきた。1979年の大平政権(一般消費税)、1987年の中曽根政権(売上税)が導入断念や廃案に追い込まれた。19894月に消費税が導入され、直後の参院選で土井たか子党首率いる社会党が消費税批判で躍進した。安倍政権は、2015年に消費税増税の延期を争点に衆院選を戦い、圧勝した。

「消費税は国民の関心事だから、選挙の争点になるのは当然」という意見がある。一見もっともらしいが、財源や社会保障のあり方に関する議論を抜きにメリットだけを声高に叫ぶのは、あまりに安易なポピュリズムではないだろうか。

高市首相には、選挙公約に囚われず、社会保障のあり方も併せたゼロベースの「検討の加速」を期待したいものである。

 

(2026年2月9日、日沖健)