やっぱり税金は嫌いですか?

メディアが報道番組で減税あるいは増税の問題を取り上げるとき、キャスターやゲストがよく、「誰だって税金は嫌なものですが…」と枕詞で言う。しかし、この「誰だって」というのは、間違いだ。

スウェーデンは消費税率25%に達し、税負担が重い。しかし、スウェーデン国民が重税に不満タラタラで不幸に暮らしているかというと、まったくそんなことはない。重税に納得しており、各種の幸福度ランキングでスウェーデンは世界トップクラスだ。過去、より良い公共サービスを受けたいという国民の声を受けて増税が行われたというから、驚きだ。

一方、わが国では、消費税率が10%と世界的にはかなり低い。にもかかわらず、国民は不満タラタラで、いまも「減税しろ!」の大合唱が起きている。幸福度ランキングも世界最低レベルで、まったく不幸せだ。

極めて興味深い違いだが、日本人の重税感が強いのはなぜだろうか。2つ可能性を思い付いた。

一つは、課税の不公平感だ。現在のわが国の税制には、多種多様な税金があり、軽減措置・非課税対象がある。そのため、軽減措置・非課税対象に適用されるかどうかで、国民の税負担に大きな違いが出る。

巧みに税負担を逃れて公共サービスだけを享受する人、つまり経済学で言うフリーライダー(ただ乗り)に対して、国民は「ずるい、許せない」と不満を募らせる。実際には大した税負担ではないのに、「他の人に比べて重税だ」と感じるわけだ。

もう一つは、政府への信頼である。エデルマン・トラスト・バロメーター2025年版で、日本の政府・メディア・NGOの信頼指数は28か国中で最下位だった。とくに政府に対する信頼度が低く、日本人は政府を信頼していない。

そのため多くの日本人は、税金を払ったら政府は「きっと無駄遣いするに違いない」と疑っている。税負担が自身の生活の向上に直結すると思わないので、「受けている恩恵と比べて税負担が重い」と考える。

そして、この2点は密接に関係している。税制が複雑なので政府の裁量の余地が大きい、そのため税制優遇などの恩恵を受けられなかった国民は不満を持ち、政府を信頼しない。

という推測が正しいなら、税制を思い切って簡素化し、政府の裁量の余地を減らすという改革が考えられる。ここで、思考実験。

u  消費税・法人税・所得税の3つだけを残し、他のすべての税金を廃止する。

u  消費税率・法人税率・所得税率はいずれも20%で、軽減措置・非課税対象などは一切なしにする。

という超シンプルな税制にしたら、どういう変化が起こるだろうか。

税・行政の透明性が高まり、国民の不公平感は小さくなる。企業の経理業務や個人事業主の確定申告は簡素化する。国会議員・国税庁職員・税理士の多くが不要になり、行政コストが低下する。

もちろん、所得再分配機能がなくなることから、低所得者から「税負担が重い!」と不満が噴出するに違いない。しかし、「他の皆さんも我慢していますよ」と諭せば、「まあ仕方ない」と不満はかなり収まるのではないか。どうしても収まらないなら、生活保護など税制以外の方法で対応すればよい。

なかなかの妙案だと思うが、問題は政治家が職を失ってしまうので、実現可能性はほぼゼロだということである。

 

(2025年11月24日、日沖健)