慶応大学野球部の常松広太郎外野手(4年=慶応湘南藤沢)が、メジャーリーグ・カブスとマイナー契約をする。常松は慶大の主軸として活躍し、9月にNPBにプロ志望届を提出したが、10月23日のドラフト会議で指名はなかった。しかし、常松の潜在能力に注目するカブスからマイナー契約のオファーが届いた。常松は、アメリカ金融大手ゴールドマン・サックスから内定を得ていたが、内定を辞退し、野球を続ける。
日本のプロ野球から声がかからなかった常松が世界最高峰のメジャーリーグに挑戦することについて、「無謀だ」「就職した方がいい」という声が多いと思っていた。ところが、SNS・ネット掲示板を覗くと、「素晴らしい挑戦だ」「野球は若い時にしかできない。悔いのないように頑張れ」といった好意的な反応が多かった。
ひと昔前まで、プロ野球に進んでうまく行かなったら、会社員としてビジネスの世界でやり直すのが極めて難しかった。しかし、近年は中途採用が一般化したし、多くの企業がビジネス以外の多彩な経験を持つ人材を歓迎するようになっている。
常松が仮に野球で成功せず就職するとしても、アメリカで挑戦した経験はビジネスでプラスになるはずだ。メジャーで活躍して一攫千金を掴めばそれでよし、失敗してもビジネスの世界で活躍できる。と考えると、今回の常松の挑戦は、そんなに無謀な賭けではなく、魅力的な挑戦だと思う。
ところで、私は20年近く中小企業大学校・中小企業診断士養成課程で教えている関係で、受講生・卒業生から「経営コンサルタントとして独立開業したい」という人生相談をいただく。とくに、55歳を超えたシニアからの相談が多い。
役職定年で社内での居場所がなくなった。住宅ローン返済のめどはたった。会社の人間関係には疲れた。よし、培ったスキル・経験と資格を生かしてプロコン(独立したコンサルタント)として第二の人生を踏みだそう!
という気持ちはよくわかるが、全国のシニアが似たようなことを考えている。55歳を境に独立開業希望者が激増し、実際に私の周りでも「最近独立しました」というシニアプロコンだらけだ。シニアプロコンが溢れかえる市場で成功するのは、容易なことではない。55歳を過ぎて独立したシニアプロコンの大半が、年収200万円未満であろう。
シニアから相談を受けたら、こうした厳しい現実を率直に伝えている。ただし、「独立開業を諦めた方が良いですよ」とは言わない。確率は低いものの、成功すれば大きな収入を得られるし、充実したビジネスライフを送ることができるからだ。生活費の蓄えが十分にあるか、失敗しても再就職する当てがあるというなら、挑戦する価値は大いにある。
ここで残念なのは、傍から見てスキル・経験も生活費の蓄えも十分にあるのに、「私ごときが独立開業なんて、とてもとても無理です」と尻込みするシニアが多いことだ。「私には、日沖さんのような実力はありませんから」とよく言われる。しかし、これはまったくの誤解だ。
はっきり言って、私を含めて若い頃に独立したプロコンの大半が、会社に馴染めなかった組織不適合者で、コミュニケーション能力が異常に低い。組織の中で鍛えられておらず、我流で適当に仕事をしているので、マネジメント力・問題解決スキル・専門知識なども低い。シニアより優れているのは、気合いと根性だけだ。
という残念なプロコンよりも、長く会社勤務で経験・スキルを培ったシニアの方が総合的にははるかにハイレベルだ。やり方を間違えなければ、プロコン相手に十二分に勝算があり、クライアントの発展に大きく貢献できるだろう。
シニアの皆さんには、ぜひ独立開業に挑戦して欲しいものである。もちろん生活費の蓄えがあることを確認した上で。
(2025年11月10日、日沖健)