日本人の国内旅行を増やすには?

コロナ禍で壊滅的な状態に陥った日本人の国内旅行。その後、回復に向かっていたのだが、最近、再び減少に転じている。観光庁によると、20251~7月で全国48都道府県の7割超に当たる35都道府県において、前年同期よりも宿泊者が減った。京都、東京など4都府県では、減少率が10%を超えた。

色々な原因があるが、インバウンド(訪日外国人)の影響が大きいだろう。インバウンドが増加したことで、全国の観光地が混雑し、宿泊料が高騰し、国民が国内旅行を敬遠するようになった。

というニュースがあると、「インバウンドを規制しろ!」「中国人は日本に来るな!」という排外主義の主張が噴出するのだが、これはちょっといただけない。

インバウンド産業の市場規模は年々拡大し、年81,000億円(2024年)に達する。お家芸だった自動車産業ですら米中勢の攻勢で暗雲が立ち込める状況で、インバウンドは衰退国家・日本に残された数少ない有望ビジネスである。インバウンドを規制するのではなく、日本人の国内旅行者数を増やすことで問題解決したいところだ。

日本人の国内旅行が減少しているのが宿泊料など旅行費用の上昇によるものなら、費用を下げるために手を打つ必要がある。ここで、業務のDXとともに取り組みたいのが、旅行需要の繁閑差の解消である。

日本人には、平日に休暇を取って旅行に行くという習慣がない。日本人の旅行は、週末や年末年始・ゴールデンウィーク・お盆に集中している。そのため、平日のオフピーク時の観光地は閑散とし、宿泊料・交通費などが安い一方、週末や年末年始などピーク時は繁忙で、宿泊料・交通費などが高い。

現在、日本の旅行関連産業は、ピーク時の需要に対応するため、設備投資をし、従業員を雇っている。そのため、設備・人員の稼働率が低迷し、収益性が低い。国民も宿泊料などが高いので旅行を躊躇する。

もしピーク時の需要をオフピーク時にシフトすることができれば、少ない設備・従業員で済むので、稼働率が上昇し、収益性も上がる。国民も宿泊料などが低下するので、気軽に旅行に行けるようになる。

という状態を実現するために政府には、国民の祝日を廃止することを期待したい。現在、わが国の国民の祝日は年間16日で、主要国では中国に次いで多い。平日の日数が少ないので有給休暇が取りにくく、「旅行は祝日・週末に絡めて行くもの」という傾向に拍車をかけている。

政府が国民の祝日を全廃し(どれを残すかと議論し始めると面倒)、企業などに有給休暇の100%消化を義務付ければ、日本でも欧米のように平日に休暇を取って旅行に出かける動きが広がるだろう

「ゴールデンウィークがなくなる」というと、国民は「旅行に行けなくなる」、旅行関連業者は「お客さんがいなくなってしまう」と反発するだろう。しかし、実際には逆のことが起こるはずだ。政府の判断一つで金を掛けずにこの問題をかなり解決することができる。やらない手はないと思うのだが、いかがだろう。

 

(2025年10月27日、日沖健)