伊東市・田久保真紀市長の騒動で、学歴が注目を集めている。ホリエモンがこの件に関連して「東洋大学はFラン」とコメントし、SNSの議論を煽った。個人的には、田久保市長の学歴なんてどうでも良いと思うが、これだけ話題になっているのを見ると、日本人は学歴が気になるらしい。
よく「日本は学歴社会だ」と言われる。しかし世界には、就職・結婚・社会的評価などで日本よりも学歴を重視する国がたくさん存在する。
韓国はおそらく世界一の学歴社会で、ソウル大学・高麗大学・延世大学(SKY)に入るかどうかで人生が一変する。中国でも、北京大学・清華大学などの卒業者が優遇されている。フランスでは、グランゼコールの卒業生はほぼ自動的に官僚・経営幹部になる。大半の発展途上国では、国内の国立大学出身者や英米への留学経験者がエリート層を形成している。
一方、転職によるリカバリーが容易なアメリカや職業訓練が充実しているドイツでは、学歴はさほど重視されていない。こうしてみると日本は、アメリカ・ドイツと並んで「非学歴社会」だと言える。個人的には、博士がひどく冷遇されている実態から、日本は「世界一の非学歴社会」だと思う。
ところで、今後、日本で学歴の重要性はどう変わっていくのだろうか。
ビジネスの世界では、就職・転職、あるいは組織内の評価でも、学歴の重要性が低下していく。生成AIの発達・普及によって、学校で学ぶ内容の重要性が低下するからだ。今後、革命的な学校改革が行われない限り、学歴よりも職歴やスキルが重視されるという流れが続くに違いない。
予想が難しいのは、結婚と社会的評価だ。
結婚において男性は、パートナーの女性に学歴よりも「性格・相性」などを求める。むしろ自分より高学歴の女性を「居心地が悪い」「コントロールできない」と敬遠する。女性はパートナーの男性に学歴よりも「収入の安定」を求める。ということで、「(現在でも)結婚において学歴は重要ではない」と言われる。
しかし、大半の女性が「自分よりも頭が悪い男性はお断り」と考えており、頭の良し悪しのシグナルとして学歴を重視している。女性は本音では、結婚において学歴を重視しており、この傾向は今後も大きくは変わらないだろう(「お前に女性の気持ちがわかるかよ!」といった反論を大いに歓迎する)。
社会的評価は、さらに予想が難しい。職業・働き方・価値観・ライフスタイルなどが多様化すると、色々な評価軸が出てくる。よく「学歴だけじゃ人を評価できないでしょ」と言われる通り、多様化によって相対的に学歴の重要性は低下していくように見える。
一方、SNSでフェイク情報が氾濫すると、人は不安になり、たしかでわかりやすい評価軸を求めるようになる。「個人情報のうち、有用で信じられるのは学歴だけ」ということで、学歴がますます重要視されるのではないだろうか。
ということで、ビジネスはともかく、結婚や社会的評価では、学歴が引き続き重視されることになりそうだ。
ところで、ホリエモンは、田久保市長の件で終わらず、9月6日Xに「早慶と東大って高校生の頃の受験格差で言ったら月とスッポン」と投稿した。ご存知の通りホリエモンは、東大を中退し、裸一貫で成功した。なので「学歴なんてクソ食らえ」と思っているかと思いきや、意外と学歴を気にしているようだ。
あのホリエモンですら学歴が気になっているということは、普通の日本人は推して知るべしだ。ビジネスはともかく日本人の気持ちの世界では、今後も学歴は極めて重要な位置を占めるような気がする。
(2025年9月29日、日沖健)