知人のYさんは、40代の独身男性である。何か困ったことがあると「オレ頭悪いから」と口にする癖があり、実際に知能レベルは低い。Yさんには結婚願望があり、好みの女性について「高望みはしない。俺より頭の悪い女で構わない。というより、頭の悪い女の方が、気が楽でありがたい」とのことである。
それを聞いて私は「お前よりも頭の悪い女って、なかなか希少な存在。希少品をゲットしたいって、逆に高望みじゃないのか? 拝み倒して頭の良い女の世話になった方が、今より良い暮らしができるのでは」と指摘した。Yさんは「それもそうだな」と笑っていた。
学友のSさんは、50代の独身女性である。MBAを優秀な成績で卒業し、現在、外資系企業の役員をしている。Sさんには結婚願望があり、好みの男性について「多くは望まないけど、自分より頭の悪い男はちょっと勘弁して欲しい」と語っている。
恐らくこの世の男性の99%以上がSさんより頭が悪いはずだ。自分と同等以上の知能の男性を希望すると、結婚のハードルが格段に上がってしまうのではないか。と、本人には言っていないが…。
YさんやSさんは特殊な例だろうか。そうでもない。
男性と話すと、「頭の良い女性と一緒にいると息が詰まる。勘弁してほしい」「馬鹿な女ほど可愛げがあっていい」とよく言われる。純粋に頭の悪い女性が好きというより、男性にはパートナーを支配したいという欲求(支配欲求)があり、頭の悪い女性の方が御しやすいと考えているのだろう。
女性の気持ちはよくわからないが、調査によると20代の女性の約3割が専業主婦を希望しているらしい。女性には、自分より頭の良くて経済力のある男性に守られて暮らしたいという欲求(追従欲求)が強いのかもしれない。
これは、非婚化で少子化が加速している日本にとって、由々しき事態ではないだろうか。
男性はYさんのように自分より頭が悪い女性を求め、女性はSさんのように自分よりも頭が良い男性を求めるとしよう。
① 頭の良い男性と頭の良い女性
② 頭の良い男性と頭の悪い女性
③ 頭の悪い男性と頭の良い女性
④ 頭の悪い男性と頭の悪い女性
という4つの組み合わせのうち、結婚に至るのは②だけだ。男女が同数で、知能レベルが平均では同等なら、その確率は25%である。①は男性が、④は女性が相手の能力を見誤った場合に結婚に至る。③は、男性も女性も相手の能力を見誤った場合に限って結婚には至る。
つまり、欲望が解き放たれた現代の日本では、国民の4人の1人しか「結婚しない」わけだ。大切なのは、国民の4人の3人は、「結婚できない」という以前にそもそも「(無理して)結婚したくない」わけだ。
いま国・自治体は、「結婚したいが経済的理由などで結婚できない独身男女」を対象に様々な少子化対策を打っている。しかし、上記の仮説が正しいとすれば、国・自治体の対策はまったく無駄だ。
少子化を食い止めるには、自分より頭が良いか悪いかでパートナーを選別するという発想を根底から変える必要がある。学校教育や家庭のしつけを変える必要があり、途方もない難題である。
(2025年6月16日、日沖健)