松本人志さん・忠犬ハチ公・トランプ大統領

最近、少し気になったことを4つ。

<松本人志さんが訴訟を取り下げ>

 松本人志さんは、自身の性加害を報じた週刊文春を名誉棄損で訴えていたが、8日訴訟を取り下げた。「事実無根なので戦いまーす」と芸能活動を休止してまで提訴したのは、いったい何だったのか。実に馬鹿馬鹿しい話だが、気になって芸能ニュースを見てしまう。

<忠犬ハチ公に異論>

先日、渋谷に寄ったら、平日の昼間にもかかわらず、ハチ公像の周りには外国人観光客の人だかりができていた。飼い主だった上野教授を慕い、亡き飼い主に会うために渋谷駅に通い続けたハチ。今も世界の人々の感動を呼んでいる。

ところで、この美談には古くから異論がある。①上野教授は通勤時刻が不規則だったし、ハチも通勤に関係ない時間帯に駅近くをぶらぶらしていた。このハチの習慣を知らない駅員が忠犬と勘違いした。②ハチが毎日のように渋谷駅に現れたのは、駅前の屋台でもらえる焼き鳥が目当てだった。死んだハチを解剖したところ、胃に焼き鳥の串が4本刺さっていた。

という話を親友にしたところ、「お前はそんなどうでも良いことをほじくって、何になるの?」と呆れられた。たしかに、仮にハチが癌ではなく、焼き鳥の串が刺さったことで死んだとしても、事象としては大昔の犬一匹の死因が変更になるだけだ。ハチに世界中の人が感動しているなら、敢えて蒸し返すのはまったく無粋だ。

<アメリカ次期大統領の経済政策>

先週の米大統領選でドナルド・トランプ候補が勝利し、大統領への復帰が決まった。選挙戦では色々な争点があったが、世界的に注目されたのは経済政策である。

「アメリカ第一」を掲げるトランプ候補の輸入制限・移民制限・財政出動・減税といった経済政策は、いずれもインフレを加速させるものだ。「アメリカ第一」とインフレ抑制の両立は困難で、実際にどういうかじ取りをするのか大注目だ。

<新時代のリーダー像>

今回の米大統領選は、高齢のトランプ候補と若いハリス候補、白人男性とアジア系黒人女性、財界出身と法曹界出身、犯罪者と元検察官…とあらゆる面で対照的な2人の戦いで、どういうリーダーが新時代に相応しいかを考える良いきっかけになると思われた。

しかし、お互いが相手を非難することに終始し、リーダー像に関する議論はまったく深まらなかった。

リーダーシップ論では、リーダーが他の人たちに付き従ってもらうには高潔な人間性が必要だという考え方がある。明らかに人間性に問題があるトランプ候補が世界のリーダーになろうとしているのに、リーダーの人間性のあり方についてメディアはもちろん専門家からもほとんど意見表明がなかったのは、いかがなものか。

 ところで、人があることを話す(考える)とき、話題性が高い・低い、重要性が高い・低い、とテーマを分類することができる。

   「松本人志さんの訴訟取り下げ」は、話題性は高いが重要性は低い

   「忠犬ハチ公に異論」は、話題性も重要性も低い

   「アメリカ次期大統領の経済政策」は、話題性も重要性も高い

   「新時代のリーダー像」は、話題性は低いが重要性は高い

このうちやはり問題は、④話題性は低いが重要性は高いというテーマである。本当はしっかり議論を深めていく必要があるのだが、ずっと無視されたままだ。わが国の政治だと、膨張する防衛費・社会保障費を補う増税の是非は、④に該当するだろう。

愚かな我々一般庶民は、普段は①、たまに③を論じるだけだ。一般庶民が議論を避ける④を取り上げることが、リーダーの大切な役割の一つだと思う。日米でリーダーが決まった今、改めて国家にとって何が④に当たるのかを考え、しっかり取り組みたいものである。

 

(2024年11月11日、日沖健)