日経平均が史上最高値を更新

年初から好調な東京株式市場。日経平均は、先週22198912月の市場最高値38,915円を34年ぶりに更新した。

市場関係者は「これは単なる通過点、すぐに4万5千円まで上がる」「長期的には10万円だ!」「日本経済・日本株は完全復活した」と湧き立っている。

私は社会人2年目の1989年に株式投資を始めた。当時はバブル絶頂期でそれ以降長く低迷が続いたので、今回の最高値更新は感慨深いものがある。

株式市場は「経済の鏡」だし、「景気は気(気分)から」と言う。久しぶりに日本株が世界から注目を集め、日本人の気持ちが前向きになっているのは喜ばしいことだ。ただ、「浮かれている場合か?」とも思う。

年明け以降の急激な株高は、①日本の変化に期待する外国人の買い、②円安、③賃上げ→景気回復、④半導体ブーム、⑤企業統治改革、⑥中国経済の低迷による日本の再評価、といった好材料が重なったことによるものだ。

このうち①③④⑤は、将来の期待であって、まだ良い変化が本格的に実現したわけではない。②⑥も日本経済が良くなったことを意味するものではない。

GDPが2四半期連続マイナス成長で、いまテクニカル的にはリセッション(不景気)である。21か月連続で実質賃金が減少している通り、インフレに賃上げが追い付かず国民の生活がますます苦しくなっている。

日経平均はファーストリテイリングやレーザーテックなど一部の値がさ株の動向で大きく振れる欠陥指数だし、株価は半年先を反映するので、世界的な半導体ブームへの期待で日経平均が爆上げするのは不思議なことではない。とはいえ、不調な実態経済と好調な株価の乖離があまりにも大きい。

ここで、もっと長期的な視点から企業の経営改革のあり方を考えるべきではないか。

世界の時価総額ランキングを見ると、1989年末の時点で日本企業はNTTが首位、10位以内に7社、50位以内に32社と、まさに世界を席巻していた。ところが、2023年3月時点で50位以内に日本企業はゼロである。

一方、アメリカは、1989年に10位内はIBM(第6位)だけだった。しかし2023年にはアップルが首位、10位以内に9社、50位以内に32社となっている。この34年間で日米の立場が完全に逆転した。

いま、日本では企業統治改革が話題になっている。つまり、日本ではPBR(=時価総額÷純資産)が1倍割れの企業が多く、せめて解散価値を上回るように資本効率を高めようということだ。こうした改革が「不要」とは言わないが、それが最も重要な改革で、それを囃して日経平均が爆上げするほどのことだろうか。

時価総額ランキングから見る限り、日本企業が大変貌する世界に潮流に取り残されたことは明らかだ。日本企業に必要なのは、世界で通用する革新的で成長性の高い事業を創り出すことである(先週の本欄「日本のGDPがドイツに抜かれたのは大した問題ではない?」参照)。

もちろん、不採算な事業にヒト・モノ・カネが滞留している状態で、新しい事業を始めることはできない。不採算事業からの撤退と成長事業の創造が、日本企業に必要な改革ということになる。

今回の高値更新を受けて、企業経営者は「俺たちもここまでよく頑張った」「俺たちの経営は正しかった」と安堵・慢心せず、経営改革に取り組みたいものである。

 

(2024年2月26日、日沖健)