コンサルタントの廃業が今年のトレンドに

年賀状やSNSで知人の近況を知ることが多いこの季節。知り合いのベテランコンサルタント(中小企業診断士、以下「診断士」)2人から、「そろそろ引退しようと思います」という連絡をいただいた。

もちろん、背景にあるのはコンサルタントの高齢化である。今回引退宣言をした2人は、いずれも70代である。

2000年以降、診断士は人気資格になり、若い受験者が増えたが、以前は「高齢者のための資格」だった。つまり、定年退職が迫った会社員が「診断士を取って、老後にボランティアとして公的支援のお手伝いでもするか」と受験することが多かった。それから20年以上経ち、高齢者が現役からフェイドアウトするというのは、当然ありうることだ。

ただ、引退宣言をしたことについては、「おや?」と首を傾げる向きが多いのではないだろうか。

コンサルタントは、事業資金も体力も要らず、意識さえはっきりしていればいつまでも続けることができる。実際、「生涯現役」を高らかに宣言し、死ぬまでコンサルタントを続けるケースが多く(もちろん、最後の方は「コンサルタント」と名乗っているだけで仕事はしていないが)、生前に引退宣言をするというのは珍しい。

どうして2人は、引退宣言したのだろうか。訊ねたところ、一人は、思うところあって「終活」を開始し、生活や人間関係など色々なことに区切りを付ける一環だという。これは理解できる。

意外だったのが、もう一人のAさん。「コンサルタントの仕事がつくづく嫌になった」という残念なコメントだった。

Aさんは、50代に診断士を取得し、定年後コンサルタントの活動を始めた。地元の公的機関に専門家登録し、公的支援の仕事に従事した。会社勤務時代に培った知識・経験を生かして中小企業や地域の発展に貢献することができ、充実した毎日だった。

風向きが変わったのが、2013年頃。経済産業省が権力を持った第2次安倍政権では、中小企業支援のために様々な補助金が導入された。当初Aさんは、「補助金が困難な状況にある中小企業を救う」と信じて補助金申請支援に従事した。

しかし、補助金が普及するにつれて、中小企業経営者と経営の話をしようとしても、「そういう話はもういいから、補助金の取り方を教えてくれ」と言われるようになった。Aさんは、公的支援の仕事に疑問を感じるようになった。

2020年からコロナ禍で補助金がさらに増え、Aさんの仕事はいよいよ補助金申請支援オンリーになった。支援した中小企業経営者が持続化給付金をもらって豪遊していたり、周りの診断士が補助金の不正受給に加担しているのを見て、「自分が取り組んだ仕事は何だったのか」と無力感を覚えた。こうしてAさんはコンサルタントの仕事に見切りを付けた。

Aさんは、現時点では特殊な事例である。ただ、これから増えていくかもしれない。

先日、経済産業省は、持続化給付金などで2110者の不正受給者を認定し、返還に応じない477者の名前を公表した(https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka_fusei_nintei.html)。信用第一のコンサルタントの世界で、不正に加担した悪質業者が事業を続けるのは難しい。また、Aさんのように、コンサルタントに見切りを付ける人も出てくるだろう。

今年から、コロナ禍で膨れ上がった補助金が縮小することが確実視されている。という市場環境の悪化も相まって、今年は「コンサルタントの廃業」というトレンドが始まりそうだ。

 

(2024年1月8日、日沖健)