ENEOSのトップが2年連続セクハラで辞任

先週19ENEOSは、宴席で女性にセクハラ行為をした斉藤猛社長を解任した。また、同席していた谷田部靖副社長に「不適切行為を防げなかった」として辞任を勧告、須永耕太郎常務も同じ女性に不適切な発言をしたとして減俸処分にした。同社は、昨年8月にも杉森務会長が飲食店でのセクハラ行為で辞任しており、2年連続で経営トップがセクハラで辞任するという異例の事態である。

私はENEOSの前身の日本石油に勤務し、杉森前会長は新入社員のときの教育担当者(最初の上司)、須永常務は財務部・MBA留学の同僚だった。という身近な存在が不祥事を起こしたのはなんとも残念だが、同時に「さもありなん」と冷めた見方をしている。

石油会社はビジネスモデルがシンプルで、仕事が極めて簡単だ。また、業績が原油価格・為替というマクロ要因に大きく左右される。そのため、仕事ができる人・業績を上げた人よりも、政治力(=仲間づくり)に長けた人が出世する。

日本石油では、昭和の時代から人事部門と産業エネルギー販売部門がし烈な主導権争いを繰り広げていた。出世するには、まず部門内で仲間を作ること、部門長になったら他部門を自陣営に引き込むことが必須だった。その仲間づくりや陣営形成の最大のカギになるのが飲み会。私も先輩から「偉くなりたかったら、仕事をするよりまず酒を飲め」と言われた。

という飲み会が絶対という社風だったので、飲み会での失敗には枚挙の暇がない。むしろ、今回のような失敗を見て「あいつは大物だ」「彼も人間臭くて見どころがある」と喝采する風潮すらあった(少なくとも出世のマイナスにはならなかった)。なので、昨年の件も今回の件も、個人的には少しも驚かなかった。

とは言え、2年連続というのは、世間の常識に照らすとやはり異常だ。斉藤社長は、昨年杉森会長の首に鈴を付けて、ENEOSの再生を高らかに誓った本人。あの誓いは何だったのか、と思わずにいられない。

今回の不祥事で個人的に感じたのは、以下の3点である。

    組織の体質は簡単に変わらない。日本石油は1999年以降、三菱石油・九州石油・ジャパンエナジー・東燃ゼネラルと、合併を繰り返してきた。その度に「今こそ生まれ変わる」と誓ったが、日本石油の古い体質は厳然と残っているようだ。

    会社の常識と世間の常識は大きく異なる。派閥争いも飲み会でのセクハラも、昭和の会社ではよくあったことだが、いま時代には完全な非常識である。会社の常識と世間の常識が異なるということすらわからなくなっているくらい、会社の常識に染まりきってしまったのだろうか。

    経営トップに社外の声は届かない。ENEOSには、昨年の事件を受けて色んな批判が会社に届いていたはず。が、まったく同じ不祥事が繰り返されたところを見ると、経営トップに社外の声が届いていなかったようだ。自分でSNSを見ればと思うが、そういう習慣はないのだろうか。やはりトップは「裸の王様」ということのようだ。

このニュースを見た多くの方が、「一流と言われる大手企業でも、結構しょうもないんだな」と思われたことだろう。まったくその通りだ。が、これを「あっははは」で終わらせず、他山の石として組織のあり方を見直すきっかけにして欲しいものだ。

 

(2023年12月25日、日沖健)