日本のコロナ対策は成功だったのか

2020年1月15日に日本国内で初の新型コロナウィルスの感染者が確認されてちょうど3年になる。日本では今も感染第8波の真っ最中なので、総括するのは時期尚早かもしれないが、ここまでのコロナ対策は成功だったのだろうか。

先日、東北大学の原塑准教授(科学哲学)に意見を伺う機会があった。原氏は、「日本のコロナ対策はここまで概ね成功している。とりわけ初期対応は素晴らしかった」と政府の対策を高く評価していた。結果的に、諸外国と比べて人口百万人当たりのコロナ死者数が少ないことが、その理由らしい。

これに対し、私は「日本はゼロコロナを目指した結果、経済活動が制約され、主要国の中で最も経済の打撃を受けた。今もマスクを外せないなど、不自由な生活がいている。コロナ対策が成功だったという認識には、強い違和感がある」と指摘した。

すると、原氏は「経済の打撃といっても、日本経済は元々ダメですからね」と取り合わなかった。原氏にとっては、経済が打撃を受けても、国民が不自由な生活を強いられても、コロナで命を落とさないことが大切らしい。

ということで、この問題はどのポイントに着目するかで評価が分かれるということだろう。ただ、個人的には、日本のコロナ対策は全体的には大失敗だったと思う。日本人は、諸外国の人々と比べて「不幸だった」からだ。

コロナ初年度の2020年、ブラジルなど一部の例外を除く世界の大半の国が、感染拡大を抑え込もうと、ロックダウンなど厳格な対策を講じた。2020年は、程度や結果の差はあれど、世界中がゼロコロナを目指していた。しかし、2021年半ばから、日本・中国とそれ以外で対応が大きく分かれていく。

2021年からコロナが弱毒化したことを受けて、日本・中国以外の主要国は多少の犠牲を覚悟して行動制限を撤廃し、集団免疫を獲得すること、いわゆるウィズコロナへと舵を切った。その結果、ノーマスクでワールドカップをワイワイ楽しんでいた通り、世界の人々は自由で幸福な生活を取り戻した。

一方、日本は今もゼロコロナを堅持している。「いや、すでに事実上ウィズコロナになっている」という指摘もあるが、いまだに日々の感染者数を把握し一喜一憂しているように、政府も国民も「ゼロコロナが理想」と考えているのは間違いない。日本人は、炎天下でもマスクをし、人と会わず、こっそり人目を忍んで酒を飲んでいる。何とも惨めで不幸な生活が続いている。

多少のコロナ死亡者があっても、大多数の国民が幸福に暮らす諸外国。基礎疾患を持つ高齢者を救うために、全国民が我慢して不幸に暮らす日本。ベンサムの「最大多数の最大幸福」という言葉に従うなら、日本のコロナ対策は大失敗だったと考えるのが自然ではないだろうか。

もちろん、ベンサムの功利主義には「弱者切り捨てだ」という強い批判がある。自分が不幸になっても、弱者に優しい社会を維持することの方が大切だ、という考え方は尊い。なので、私の考えが絶対的に正しいとも、共感してくれとも思わない。

ただ、政府のコロナ対策を支持している人やマスク信者の人たちには、自分の考えが政府の政策や他人の行動に影響を与え、間接的に日本人、とくに将来ある若者を不幸にしているということは、自覚してもらいたいものである。

 

(2023年1月16日、日沖健)