なぜ日本ではサッカー人気がいまいちなのか?

先週18日、4年に1度の祭典、ワールドカップ・サッカーが幕を閉じた。アルゼンチンとフランスの決勝は、両チームが死力を振り絞った、歴史に残る激闘だった。スペイン・ドイツという強豪を破った日本の活躍も見事だった。

今回、世界中のファンが熱狂する姿を見て、改めてサッカーは「スポーツの王様」だと思った。日本・アメリカでは野球、インドではクリケット、ニュージーランドではラグビーが人気だが、こうした少数の例外を除いて、世界の多くの国でサッカーがダントツの人気ナンバーワンだ。

なぜサッカーは「スポーツの王様」なのだろうか。日本で人気の野球と比較して、サッカーにはたくさんの素晴らしい点がある。

    ボール1つで楽しめるので、多くの人が競技に参加できる。

    ゲームの仕組みやルールが簡明で、言語や専門知識の壁がなく、気軽に競技に参加し、観戦できる。

    試合展開がスピーディで、しかも2時間できっちり終わるので、飽きずに観戦できる。

    点数があまり入らず、弱者でも守りを固めれば失点をかなり防げるので、手に汗を握る接戦になりやすい。

逆に野球がサッカーよりも明らかに優れているのは、ピッチャーを交代させれば毎日でも試合ができるという点くらいだ。ということで、サッカーが人気ナンバーワンなのは、まったく当然のことである。

となると、なぜ日本ではこの素晴らしいスポーツの人気がいまいちなのか、という疑問が湧いてくる。1991年のJリーグ発足後はかなりマシになったものの、ワールドカップの時期を除くと国民のサッカーに対する関心は、諸外国と比べて著しく低い。

ここからは、まったくの個人的な意見。実は私もサッカーより野球の方が好きだ。競技そのものは、上記の通りサッカーの方がはるかに面白いが、サッカー選手の「潔くない」行為に嫌悪感を抱いてしまうからだ。

サッカーの試合では、次のような選手の「潔くない=見苦しい」行為を頻繫に目にする。

    フリーキック・PKを獲得するために、ちょっとした接触でもド派手に転倒し、のたうち回って痛がる(シミュレーション)。

    ファールを犯したとき、相手のリスタートを遅らせるために、ボールを手で拾い上げる。

    自分たちに不利な判定を下した審判を取り囲んで、威圧的に詰め寄る。

これらはルール上は反則のはずだが、かなり酷い場合を除いて審判は取り締まらず、「ごく普通の行為」になっている。また、サッカーファンから非難が出ることもない。サッカー選手・ファンにとって、これらは当然のサッカー文化なのだろう。

しかし、潔さを重んじる私のような古いタイプの日本人は、こうした潔くない行為に嫌悪感を抱く。とくに、私の世代は中学・高校の体育の授業で「審判は絶対」と教えられたので、③は実に不愉快だ。今回のワールドカップでもそういう場面を見て(どの試合か忘れた)、テレビを消してしまった。

ということで、サッカーに対して厳しいことを書いたが、逆にそれさえ改善すれば、日本でも幅広い世代のファンが増えて、諸外国と同じようにダントツで人気ナンバーワンになるのではないだろうか。

今回の日本代表は、フェアプレイに徹し、イエローカードが少なく、しかも好成績を収めた。森保監督や選手の試合後のインタビューなども含めて、他国の模範になる非常に「潔い」チームだったと思う(フェアプレイ賞はイングランドだったが)。

日本代表には、「ベスト8進出」だけでなく、「フェアプレイを世界に広げる」という目標を持って戦い、世界のサッカー文化を変えて欲しいと願っている。

 

(2022年12月26日、日沖健)