アニマルウェルフェアでディズニーランドが閉鎖へ?

アニマルウェルフェアが注目を集めている。アニマルウェルフェアとは、動物を「感受性を持つ生き物」と捉えて、家畜にとってストレスや苦痛の少ない飼育環境を目指すという考え方だ。すでにスターバックスやマクドナルドは、ケージフリー、つまり「ケージ(檻)を使って飼育した鶏が産んだ卵や鶏肉を使用しない」と宣言している。

卵を産むために育てられる採卵鶏には、アニマルウェルフェアの実現度の高い順から4つの飼い方がある。①放牧(鶏を野外の地面の上に放して飼育)、②平飼い(鶏を鶏舎の中で地面に放して飼育)、③エンリッチドケージ(巣・止まり木などが設置された改良型ケージの中で鶏を飼育)、④バタリーケージ(何段も積み重ねられたケージの中で飼育)

多くの国では、効率的かつ安定的に卵を産ませるために「バタリーケージ」が主流になっている。こうした「エンリッチドケージ」「バタリーケージ」をやめ、「放牧」や「平飼い」し、家畜のストレスや苦痛を軽減してあげようということだ。

ケージフリーは、生産者にとってコストアップになる。日本の畜産業者の9割以上がケージ飼いをしており、ケージフリーに反対の立場だ。吉川貴盛・元農水相が鶏卵生産業者から500万円の現金を授受した2021年の贈収賄事件では、鶏卵生産業者が農水相にアニマルウェルフェアの国際基準への反対意見の取りまとめるよう働きかけたと言われる。

日本では、卵は小売価格が戦後長く低位安定し、「物価の優等生」と言われてきた。しかし、ケージフリーによるコストアップで、今後、卵の小売り価格が大幅に上昇することは必至だ。いま、「卵が高くなったら家計がたいへん」という悲鳴が国民の間で広がりつつある。

今のところ、アニマルウェルフェアは鶏や豚といった家畜が中心だ。ただ、「感受性を持つ生き物」は家畜だけではない。家畜だけでなく、色々な動物にアニマルウェルフェアの適用範囲が拡大し、厳格(過激)になっていくだろう。

やはり気になるのが、ペットだ。フランス上院は1118日、動物愛護に関する法律の改正案を可決した。動物の福祉や衝動買い防止の観点から、犬・猫のペットショップでの販売を2024年から禁止する。犬・猫を飼う場合、保護団体や個人からの譲渡、ブリーダーからの直接購入となる。また、施設でのイルカやシャチのショーを2026年から、移動型サーカスでの野生動物の利用を2028年から、それぞれ禁止になる。

日本は、犬・猫だけで1,800万頭以上のペットがいる世界有数のペット大国である。しかし、ペットの虐待・飼育放棄・遺棄・殺処分などが社会問題になっており、アニマルウェルフェアは劣悪な状態だ。捕鯨と同じく、日本のペット問題は国際的な非難を浴び、遅かれ早かれ、ペットの販売や飼育を厳しく制限するようになるだろう。

さて、ここからは私の予想(妄想)。

203×年、世界中でペットは原則禁止になる。動物園・水族館でのショーが禁止になり、檻での飼育が禁止され、事業継続が困難になった動物園・水族館が次々と閉鎖に追い込まれる。

204×年、家畜・ペットだけでなく、すべての生き物の尊厳を尊重することが国際ルールになる。害虫・害獣の残虐な駆除が禁止され、ネズミ・ゴキブリ・カラスなどとどう共存するかが大きな課題になる。

205×年、アニメやキャラクターで動物を面白おかしく取り上げることが「動物の尊厳を傷つける」として禁止される。ミッキーマウスは隠れるようにひっそり引退。パリを皮切りに世界中のディズニーランドが閉鎖に追い込まれる…。

個人的には、ペットもディズニーランドも好きではないが、姿を消すと少し寂しい。アニマルウェルフェアが家畜やせいぜいペットに限定され、それ以上広がらないで欲しいものだ。

 

(2021年12月6日)