バブル相場をどう考えるか

このところ騰勢を強める日本株。先週13日の東京市場で日経平均は、ついに史上最高値を更新した。と聞いて「え? 嘘こくなよ!」と思われる方が多いだろうが、嘘ではない。米ドルベースの日経平均は274.46ドルに上昇し、19891227日に付けた最高値273.07ドルを上回った。

東京市場で売買の6割以上を外国人投資家が占めている。外国人投資家は、円ベースの日経平均(最高値は1989年の38,915円)よりもドルベースを強く意識し、しかも順張り志向(上昇局面で買い上がる)である。ドルベースの日経平均が歴史的な節目を超えたことで、今後、外国人の日本株への投資意欲が強まりそうだ。

ここでやはり違和感を覚えるのが、新型コロナウィルスの影響である。日経平均はコロナ第1波の影響で急落し、3月16日に16,358円の安値を付けた。ところが、すぐさまV字回復し、コロナ前の水準を取り戻した。アメリカ大統領選が終わった11月から上値追いを始め、さらにコロナ第3波の影響が深刻化した年明け後さらに上昇が加速し、節目の3万円が見えてきた(115日終値は28,519円)。

コロナの影響で実体経済が窮地に追い込まれている中、株価だけどんどん上がっていくのは、「バブルだ」とされる。バブルとは、実態(利益)を伴わない資産価格の上昇だ。日経平均のPER(株価収益率=株価÷1株利益)は現在27倍で、一昨年までの平均15倍前後を大きく上回る。株価は半年から1年先の企業収益を反映するとはいえ、現在の株価水準は2~3年先の大増益を織り込んだ水準で、利益から考えると明らかにバブルである。

バブルというと多くの投資家は、1980年代末の資産バブル、2000年頃のITバブル、2008年の住宅バブルがいずれも大暴落で終わったことを想起し、「そのうち破裂する」と考える。ただ、今回のバブルがいつ破裂するかは、なかなか微妙だ。

今回なぜバブルが起こったのだろうか。3月から9月頃まではワクチン開発と経済正常化への期待を織り込んで上昇した。これは、やや期待先行だったものの、理屈が通る話だ。しかし、12月後半以降、コロナ感染拡大が深刻化するほど株価上昇が加速しているのは、状況の悪化に対応して日銀が金融緩和を強化しているからだろう。

日銀は2013年から続く大規模な金融緩和を昨年さらに強化し、今後も維持する方針だ。2020年に日銀は、緩和マネーで日本株を7兆1,366億円も買い越した。外国人は33,635億円の売り越しだった。2018年以降、外国人が売り、日銀が買うという構図が続いている。日本株を買いまくった日銀は、今ではアドバンテスト株の24%、ファーストリテイリング株の20%を保有するなど、日本最大の大株主になっている。

つまり、バブルが弾けるか、いつ弾けるかは、コロナと日銀の対応次第ということになる。コロナが終息し、黒田日銀総裁がかつての三重野総裁のように金融引き締めに舵を切ったら、バブルは弾け、日経平均は暴落するだろう。一方、コロナが終息しない状況が続くと、日銀は金融緩和の手を緩めることはできない。株高が継続するだろう。

コロナが今後どうなるかは、専門家でも意見が分かれるところだが、ワクチンが普及するのは半年以上先だと言われる。また、コロナが終息しても、日銀が即座に引き締めに転じるとは考えにくい。とすれば、少なくとも株価はあと半年は、なかなか下がらない堅調な相場が続きそうだ。

ここまで読んで、多くの方は「何だか世の中おかしい」と思ったに違いない。世の中がコロナで大混乱するほど株が上がる、資本主義社会で中央銀行が最大の株主になっている、世の中で多くの人が苦しんでいるのに資本家はますます豊かになる…。

発見以来すでに1年以上経つのに、まだまだわからないことが多いコロナ。しかし、コロナが世の中の矛盾を炙り出す働きを持つことは、どうやら間違いなさそうだ。

 

(2021年1月18日、日沖健)