会社員の連れランチはどうなる?

1月7日に発出された新型コロナウィルスの緊急事態宣言では、感染拡大の急所として飲食店が対策のターゲットになっている。飲食店の時短営業が推進される中、にわかに注目されているのが、ランチタイムである。「ランチならOKでしょ」ということで、昼時の飲食店では、高齢者グループの飲み会や主婦の食事会が引き続き行われており、問題視されている。

ただ、多人数でのランチというと、それより圧倒的に数が多いのが、オフィス街に勤める会社員が同僚と連れ立ってランチを取りに飲食店に出かける“連れランチ”(という用語があるかどうか不明)である。先週出張で行った名古屋のオフィス街では、いつものように連れランチの光景が見られた。ネットでは、「こういう時なんだから、昼飯くらい一人で食べろよ」という批判がある。

どうして会社員は連れランチをするのだろうか。ある大手商社の管理職に聞いたところ、「別に理由なんてありませんよ。午前中に一緒に仕事して、その流れで一緒に行っているだけです」という答えだった。

たしかに、仕事を進める上で、流れというのは大切だ。とくにグループで仕事をしていると、議論や共同作業が続いてランチタイムにずれ込むことがある。一人でランチを取ると、そこで流れが断ち切られてしまうが、連れランチなら流れを切らさず、スムーズに午後の仕事に取り掛かることができる。

しかし、職種や職場にもよるが、会社員がランチタイムにかけて議論や共同作業をするというのは、週に1回あるかないかだろう。結構な数の会社員が毎日のように連れランチをしているのを見ると、仕事の流れというより、「いつもそうしているから」という惰性の可能性が高い。

それともう一つ、「大人しく皆と同じ行動をしよう」「自分だけ仲間はずれにされたくない」という意識も強く作用しているのではないか。同調圧力に影響されやすい日本人は、上司・先輩から「よし、昼飯に行こうか」と言われると、「いえ、私は一人で食べます」となかなか言いにくいものだ。

逆に、わざわざ一人でランチを取る人は、良く言うと「独立心が旺盛」、悪く言うと「協調性がない」ということになる。一般的には「変わり者」ということで、組織の中では居心地が悪い。会社を辞めて自分でビジネスを始めるのは、会社員の頃から一人でランチを食べている人が多い印象だ。

ところでランチというと、私が会社員をしていた頃、不思議に思ったのは、役員の人たちが秘書に同じビル内にある社員食堂に行かせてランチを役員室まで持って来させる“社内出前”である(役員全員ではないが、多数いた)。役員同士で喧々諤々の議論をしていたのか、役員室で一人じっくり戦略を考えていたのか、外に出るのが面倒くさかったのか、はたまた一般社員と顔を合わせたくなかったのか…。

今後コロナ対策で、連れランチは減っていくだろう。このまま連れランチは絶滅するのだろうか。それともコロナが終息したら、復活するのだろうか。今回、一人でランチを取るという経験をして、会社員の意識・行動が大きく変わるのだろうか。浜松の居酒屋で一人でランチを取りながら、あれやこれや考えている。

 

(2021年1月11日、日沖健)