新型コロナ対策、中小企業診断士の役割とは

 

新型コロナウイルスとの戦いで、感染対策とともに重要なのが、生活に困窮する国民や事業継続が困難になっている企業への経済対策。3月以降、国・自治体を中心にさまざま施策が検討・導入されている。事態は深刻化しており、早急な対策が期待されるところだ。

 

政府は、2月26日以降「この1~2週間が正念場」と繰り返し、47日からは「1か月で克服」と短期で状況を打開することを目指してきた。しかし、短期戦は決着せず、ずるずると長期化している。ワクチンの開発はどんなに急いでも1年以上かかること、札幌のようにいったん感染拡大が沈静化しても再拡大する懸念があることから、短期の決着は困難で、長期戦に備える必要があるだろう。

 

ここで一つ疑問に思うのが、国・自治体による経済対策がイコール給付金・補助金の支給になっていることだ。議論を呼んだ国民への給付金、休業する事業者への協力金、持続化給付金、家賃補助など、ほぼすべての施策が給付金・補助金である。

 

1~2か月で決着するなら、「給付金・補助金で何とかしのごう」と考えるのは正しい。しかし、国の借金が1,100兆円を超える日本のひっ迫した財政状況では、1年どころか半年でも給付金・補助金を支給し続けるのは難しい。給付金の場合、あと1~2回追加で支給するのがせいぜいだろう。給付金・補助金は、危機を一時的にしのぐ「時間稼ぎ」にすぎないことを認識するべきだ。

 

感染拡大を阻止するために、給付金・補助金を頼って3か月でも経済活動を停止し続けたら、確実に倒産・失業ラッシュになり、経済は壊滅状態になる。自殺や強盗殺人が多発し、感染による死者の何十倍にも達することだろう。「時間稼ぎ」ではなく、長期に渡ってコロナと戦い続けることができる、持続可能な経済対策が求められる。

 

持続可能な経済対策とは何だろうか。緊急事態宣言に基づく外出自粛・休業・在宅勤務を緩和し、国民・企業の活動を再開することだ。もちろん、感染拡大が続く地域では今まで通り感染対策を続けるが、それ以外の地域では3密に注意し活動を再開する。たとえば東京都でも、三多摩地区や島嶼部での感染は無視できるレベルだ。現在、都道府県単位で対策が採られているが、市町村単位できめ細かく対応に差をつけ、可能な限り活動するべきである。

 

以上は先週、東洋経済オンラインの記事「緊急事態延長で迫る経済停止が招く大問題」でかなり書いたことだが、ここからは、友人をたくさん失いそうな話。

 

現在、私の友人・知人や中小企業大学校の教え子たちを含む全国の中小企業診断士(以下「診断士」)が、国・自治体・経済団体・金融機関などから委託されて持続化給付金など補助金・融資の審査業務を担当している。危機的な状況にある中小企業を救うために頑張って欲しいと願う反面、「本当に診断士がやるべき仕事なの?」と思う。

 

審査業務も千差万別だが、大半は申請書類に不備がないか、申請者が要件を満たしているかという確認だ。別に診断士資格がなくても、マニュアルさえあれば誰でも普通にこなせる単純作業である(異論は認める)。企業経営の知識が必要なごく一部は診断士が担当するとして、基本的には失業者や貧しい学生などに仕事を譲ってあげるべきではないだろうか。

 

それよりも診断士は、クライアントを始め全国の中小企業が事業活動を正常化できるよう、今こそ知恵を絞って支援するべきだ。売上減少を補うために販路開拓を支援する、非接触型サービスなど新サービスを開発する、リストラ策を立案し、従業員の再就職を斡旋する、など診断士が専門性・経験・ネットワークを生かして貢献できることは、山ほどある。

 

審査業務に忙殺されている診断士には、診断士の本来の役割は何なのか、いま自分が果たすべき貢献は何なのか、ぜひ自問して欲しいものである。

 

もっとも、「診断士も仕事が減って、コロナの被害者なんですよ」と言われたら、返す言葉がないのだが…。

 

(2020年5月4日、日沖健)