中年の幸福感が低いのはなぜか

 

全米経済研究所(NBER)が発表した米ダートマス大学デービッド・ブランチフラワー教授の論文(Is Happiness U-shaped Everywhere? Age and Subjective Well-being in 132 Countries)によると、人生における幸福感が最も薄れるのは先進国で47.2歳、発展途上国で48.2歳であった。調査した132カ国すべてで幸福感の度合いは中年層が最も低い「U字カーブ」を描いていた。ブランチフラワー教授は「賃金の多寡や寿命の長さとは無関係に、幸福度はU字カーブを描く」と指摘する。

 

中年層の幸福感が低いのはなぜだろうか。

 

幸福感を決定する要因として、健康・収入・仕事・人間関係などがよく指摘される。

 

まず「健康」の水準は、若年層が最も高く、加齢とともに低下し、高齢層が最も低い。家族を含めた「人間関係」については色々な議論があるが、やはり社会や家族との繋がりが薄れる高齢層が低いだろう。「収入」は、中年層が他の年齢層に比べて高い。したがって、「健康」「人間関係」「収入」は中年層の幸福感が最も低い原因とは考えくく、残った「仕事」が原因である可能性が高い。

 

中年層、とくに会社勤務者は、管理職として重責を担っており、他の年齢層と比べて仕事の負担が大きい。また会社に拘束される時間が長く、趣味や人間関係に使う時間が短くなりがちだ。会社の中で働き蜂と目されるのは、たいてい中年層だ。

 

かつてユタ大学フレデリック・ハーズバーグ教授は、動機付け・衛生理論を提唱し、仕事の責任は動機付け要因、つまり責任が大きい仕事ほど満足度が高まると主張した。ところが、今回の研究結果を素直に解釈すると、仕事の責任は衛生要因、つまり不満を作り出す要因であり、ハーズバーグ教授の理論は間違っているようだ。

 

中年層の幸福感が低い原因が仕事にあるなら、中年層が幸せになるには、仕事をしない方が良いということになる。昇進を辞退し、自分ができそうな楽な業務だけを担当し、ほどほどの完成度で切り上げて、さっさと家に帰って趣味をしたり、家族との時間を過ごす…。

 

しかし、それで中年層の幸福感が高まるかというと、甚だ疑問だ。とくに日本人は仕事が好きなので、そうなったらなったで、「俺って、どうせ世の中の役に立たない、つまらない存在なんだ…」と自己肯定感が低下し、幸福感はさらに低下してしまうのではないだろうか。

 

ここからは私の仮説。仕事そのものが幸福感にとってマイナス要因であるというより、中年層は責任ある素晴らしい仕事をしているのに、上司・部下からも、家族からも、社会からも認められず、自己肯定感が低下しているのではないだろうか。

 

その原因として、中年層が自分の仕事ぶりや仕事に対する考えを発信するのに消極的で、自分のことを理解してもらえていない点が大きいように思う。FacebooktwitterなどSNSを見ても、40歳未満の層や50歳以上の層は活発に発信しているのに、40代サラリーマンの発信は極端に少ない。中年層は殻に閉じこもり、その実態は謎に包まれている印象だ。

 

中年層が自己肯定感を高め、幸福に感じるには、まずSNSで「こんな仕事をしています!」と気軽に発信することから始めてはどうだろう。

 

(2020年1月20日、日沖健)