中堅企業の管理部門の閉塞感

 

最近4カ月の間に、私が仕事で関係する3社で将来を嘱望されていた30歳代の社員が退職した。3社は商社・金融・メーカーと業種は異なるが、共通するのは従業員が数百人という中堅企業であること、そして3人とも経理・総務・人事という管理部門に所属していたことだ。

 

3人が退職した個別の理由を確認したわけではないし、会社によって事情は異なるものの、中堅企業の管理部門には独特の難しさがあることを考えさせられる。

 

まず気になるのは、管理部門の社内での地位の低さだ。大企業では、調達・製造・販売といった現業部門は仕組みが確立されていて業務の難易度は低いが、大きな組織を運営するための管理業務の難易度は高い。そのため社内で管理部門の地位が高い。一方、中堅企業では、商社なら営業、メーカーなら製造といった現業部門が主役で、管理部門は脇役、極論すると雑用係だ。管理部門の担当者は、プライドを持って働きにくい。

 

人手不足・業務多忙という問題もある。大企業では、重要性が高い管理部門に優秀な人材が優先的に多数配置される。一方、中堅企業では、雑用係の管理部門には必要最低限以下の人員しか配置されない。中堅企業の管理部門は、現業部門から押し付けられた雑用を少ない人員でアップアップで対処しており、とにかく忙しい。

 

従業員のキャリア形成も難しい。大企業では、管理部門の業務範囲が広く、人数が多いので、担当者は経理・人事・総務と色々な業務を担当し、経験・スキルの幅を広げることできる。何年か他部門を経験することも可能だ。一方、中堅企業ではひとたび経理を担当したら、退職するまで経理をやり続けることになる。黙っていても経理課長、経理部長と昇進していくのは安定という点では良いことかもしれないが、キャリアの発展性には乏しい。

 

また同じように、勤務地が変わらず、同じ上司・部下と何十年にも渡って付き合うというのは、安定している半面、息苦しいことだ。

 

このように、中堅企業の管理部門では、仕事や職場環境に閉塞感が充満しており、前向きに働くことが難しい。あくまで一般論だが、意欲のある若手が転職を考えるのは、無理からぬところだろう。

 

経営者や管理部門の責任者は、管理部門の従業員をどうケアし、この状況に対処すれば良いだろうか。

 

まず、管理部門の業務を変えたい。成果を実感しやすい、前向きになれそうなタスクを与えるようにすると良い。「コスト削減」「業務プロセス改革」「CSRの推進」といった部門横断的で挑戦的なテーマは効果的だ。

 

また、管理部門の従業員が視野を広げる機会を与えたい。社外セミナーに参加したり、他社の管理部門の担当者と交流するなどは、是非実施したい。

 

ただし、新たな業務やセミナー参加が増え、日常業務の運営に支障が出るようではいけない。無駄な業務をなくす、現業部門が雑用を自分で処理する、といった管理部門の日常業務の見直しも併せて行いたい。

 

さらに、経営者や管理部門の責任者は、従業員のことを注視し、声掛けなどコミュニケーション機会を増やすと良い。つらい立場に置かれていても、周囲からケアされていると、前向きな気持ちになれるものだ。

 

(大企業も含めて)経営者は、自社の管理部門の従業員が閉塞感を感じていないかどうか、確認し、対処することを期待したい。

 

(2019年10月28日、日沖健)