タピオカブームはどうなる?

 

いま、街を歩くと目に付くのがタピオカドリンクの店。一昨年からブームに火がつき、最近はちょっとした繁華街ならタピオカドリンク専門店があり、買い求める客の長蛇の行列ができている。先週、「週刊新潮」からタピオカブームについて取材を受けたので、その要点を紹介しよう。

 

取材の焦点は、「今後タピオカブームはどうなるか?」だったが、将来について考える前に、なぜタピオカドリンクがここまでブームになったのかを確認しよう。タピオカの流行は今回が初めてでなく、1992年、2008年に続いて3度目だ。過去2回との違いとして、その後のインスタグラムなどSNSの普及や台湾ブームとの関連がよく指摘されている。

 

ただ、それだけが要因ではない。かつてのタピオカココナッツミルクや若者に人気の飲み物であるフラペチーノと比較すると、さらに3つの要因を指摘できる。

 

1つ目には、簡単にバリエーションを増やせることだ。昔のタピオカココナッツミルクは1種類。フラペチーノはスターバックスの場合7種類だ。それに対しタピオカドリンクは、お茶、甘さ、トッピングなどを組み合わせて数十種類のバリエーションを簡単に作り出すことができる。「今日はこの味、次はこの味」と続けて楽しみ、SNSにアップできる。

 

2つ目には、ベースにお茶を使っていることだ。お茶は、ココナッツミルクやフラペチーノと比べて健康に良く、罪悪感なく楽しめる。また、味が飽きにくい。日本だけでなく“肥満大国”のアメリカでもタピオカドリンクが支持されているのは、お茶を使っていることが大きいように思う(タピオカのカロリーが高いので、本当に健康に良いかどうかは疑問)。

 

3つ目には、事業の参入障壁が低いことだ。タピオカドリンクは、そこそこの味のものを作るくらいなら特別なノウハウを必要としない。食べるための座席を用意しなければならないタピオカココナッツミルクと違って、数坪のスペースを確保すれば開店できる。手軽に参入できることから、業者が増え、一気にブームとなった。

 

では、タピオカブームは今後どうなるのか。小遣いが数千円の高校生・大学生にとって、たかがドリンクに500円も600円も出費するのは結構キツイ。今はブームの渦中なので金銭感覚が麻痺しているが、やがて正気になれば「もったいない」「馬鹿馬鹿しい」と思うようになるだろう。プラスチック容器のポイ捨てにも批判が高まりつつある。おそらく年内には、ブームは終息に向かうと思う。

 

だからと言って、数年後「そういえば昔タピオカって飲んでたよねぇ」と語られる一過性のブームに終わるかというと、そうは思わない。バリエーションを増やしやすいこと、お茶を使っていることから、それほど飽きられることなく、若者の生活にある程度定着するだろう。事業コストが低いこともあり、現存する店の3分の1くらいは生き残るのではないだろうか(3分の2は数年以内に淘汰される)。

 

では、どういう店が生き残るのか。一言で言えば「600円出しても惜しくない店」ということになる。タピオカドリンクが受けている要素、「お茶」「トッピング」「見栄え」の3つにおいてこだわりが感じられる店や着席して良い雰囲気で楽しめる店、というところか。

 

ところで、ブームに乗って続々と新店がオープンする状況についてコメントを求められた。記者のHさんは芸能人の副業など安易な参入を戒める意見を期待していたようだが、「チャンスを捉えて事業に挑戦し、ガンガン儲ける。良いことでは?」と答えた。長女が通う大学の近くにも最近4店舗でき、うち1つは学生が起業した。失敗しても人生が破綻するわけではないので、ブームをきっかけに起業に挑戦する若者が増えて欲しいものである。

 

<以上の内容の一部が先週木曜日発売の「週刊新潮」8月8日号に掲載されているので、ご覧いただければ幸いである>

 

(2019年8月5日、日沖健)