十連休とGG資本主義

 

今日は十連休の3日目。過去、年末年始に8連休はあったが、十連休は初めてのことだ。新元号が始まることと併せて、経済や国民生活にどういう影響が及ぶか、関心を呼んでいる。

 

個人的には、あまり休日が多いと東京市場が外国人投資家から敬遠され空洞化するなど重大な悪影響があり、国民の休日を大幅に減らすべきだと思う。という長期的な論点はさておき、短期的には個人消費がどうなるか、それによって10月の消費税増税がどうなるかが、現在の最大の関心事である。十連休によって、個人消費は上向くのだろうか。

 

「さあ、十連休だ!」と喜んで個人消費を増やすのは、どういう人だろう。十連休に家族旅行したり、レジャー施設に行って消費を増やすには、当然ながら十連休をカレンダー通り休めるという条件が必要だ。また、仕事を休んでも給料が減らないという条件もある。この2つの条件を満たすのは、小売・サービス以外の企業の正社員・公務員・年金生活者などだ。

 

逆に、この2つの条件をともに満たさないのは、非正規労働者や自営業者だ。とくに稼働日数に応じて収入を得るフリーターは、収入が激減し、生活を維持するためにむしろ消費を減らすだろう。

 

つまり、大まかに言うと、正社員・公務員・年金生活者といった既得権益を享受する上級国民にとって、十連休はウキウキ楽しい毎日だが、フリーターや自営業者のような下級国民にとっては、働くことも遊ぶこともできず、お金の心配に明け暮れる辛い日々になる。時事通信のアンケート調査によると、「連休をどのように過ごすか?」という問いの回答は「自宅でゆっくり過ごす(64.3%)」が最多だった。「今後も国が主導して長い連休を作るべきか?」という問いには「そう思わない」が668%に達した。

 

では、プラス面とマイナス面があって、日本全体で消費への影響はどうなのか。おそらく上級国民への効果が大きく、消費はかなり盛り上がるだろう。新元号の祝賀ムードもあるし、そもそも日本の消費支出の5割近くを60歳以上の高齢者が占めているからだ。元々消費支出が少ない下級国民がさらに消費を減らしても、影響はたかが知れている。

 

ということで、十連休は短期的には日本経済にとって良いことなのだが、マスコミの「待ちに待った十連休!」「皆さん盛り上がっていますねぇ!」というノー天気な報道はいかがなものか。十連休に打ちひしがれている下級国民がたくさんいることを一顧だにしておらず、やるせない気持ちになる。

 

先日、ひふみ投信・藤野英人社長が書いた『さらば!GG資本主義』という本を読んだ。日本では高齢者(GG)が企業の中枢に居座り続けて保守的な経営判断をし、企業の成長・発展を阻害されているという問題を指摘している。そして、企業内での高齢者支配を問題だけでなく、社会全体が高齢者を中心に回っていることも喝破している。

 

たしかに、日本では医療・年金・介護は言うに及ばず、税制・選挙制度・雇用・行政サービスなど、多くの制度・施策が高齢者を強く意識し、若者をないがしろにしている。もちろん、政府・自治体が「国家百年の計」をめぐらした結果なら、国民は受け入れるしかないのだが、なんとなく決定しているというケースが意外と多いのではないだろうか。

 

今回の十連休を企画した政府は、高齢者や正社員を喜ばせようとか、フリーターや自営業者を懲らしめてやろうといった特段の意図はなく、「働き方改革の時代だし、みんな仲良く休みましょう。景気も良くなるし」というくらいの軽いノリだろう。しかし、結果として高齢者を優遇し、若者を苦しめ、GG資本主義に加担している。

 

同じ日本人でも資産・収入・地位・ライフスタイル・考え方などが違うと、政策が及ぼす影響もまったく違ってくる。政治家・官僚には、政策が誰に対してどういう影響が及ぶかという深い洞察と「国家百年の計」が求められている。

 

(2019年4月29日、日沖健)