コンサルティング営業が理想ではない

 

先日、生命保険会社で営業をしている女性と会って、久しぶりだったので名刺を交換したら、肩書が「コンサルタント」となっていた。「いつの間にか俺と同業になったの?」と一瞬ビックリしたが、聞いてみると、やっている仕事は以前とさほど変わりなく、その保険会社では、営業担当者にコンサルティング営業をしてもらうため、営業担当者を「コンサルタント」と呼ぶようになったらしい。

 

近年、保険だけでなく、銀行・ITなどさまざまな業界で、コンサルティング営業が強調されるようになっている。「コンサルタント」と言うと、つい10年前まで非常にマイナーな職業だったが、営業担当者がコンサルタントになり、すっかり市民権を得た印象だ。

 

ところで、コンサルティング営業とは何だろうか。

 

色々な解釈があるようだが、単に作ったものを売る物販営業やソリューション営業と比較すると、違いがわかりやすい。営業は、販売→ソリューション営業→コンサルティング営業と進化していく。

 

たとえばIT業界だと、最初は演算処理能力の高いコンピューターを販売する。しかし、製品の性能で他社と差が付かくなると、お客様が直面する問題の解決策(ソリューション)を提案して売ろうとする。ソリューション営業だ。一般に単体の製品ではソリューションを提供できないので、ネットワーク・サーバー・ソフトウエアなど周辺機器・製品を組み合わせて、システムとしてソリューションを提供する。さらに、それでも差がつかなくなると、お客様の問題を一緒に考えるところから始める。これがコンサルティング営業だ。

 

ソリューション営業とコンサルティング営業もお客様の問題解決を目指すのは同じだ。違いは、お客様が問題を明確に認識しているかどうかである。

 

たとえば、物流作業や在庫管理に問題を抱えるメーカーがサプライチェーンマネジメント(SCM)のシステムを作ろうと考えた。しかし、社内の人材ではシステムを作れない。「よし富士通にシステム構築を依頼しよう」という場合、富士通が提供するのはソリューションだ。それに対し、あるメーカーが物流作業や在庫管理がうまく行っていない。「どういう問題があり、どう対処すれば良いのか富士通に相談しよう」という場合、ここで富士通が提供するのは、コンサルティングである。

 

ということで、営業がだんだん進化し、最終的にコンサルティング営業に行きつくのだが、ここに大きな盲点がある。「進化」というと、コンサルティング営業が最も優れていて、最も儲かりそうな印象を受けるかもしれないが、そうではない。

 

コンサルティング営業では、外部のコンサルタントがお客様の問題を見つけ出すのは至難の業だし、この問題に対処しようと合意して解決するのも難しいし、仮に解決できてもその会社と他社では問題が違うので、成果物を横展開できない。つまり、コンサルティング営業は人手と手間がかかり、成果が出しにくい、極めて効率の悪い営業なのだ。最も効率が良いのは、圧倒的な競争力を持つ製品を作って、世界中に売りさばく販売である。

 

IT業界を見てもそうだ。かつてIT業界の主役だったIBMや富士通は、近年コンサルティングに熱心に取り組んでいるが、それほど儲かっていない。一方、そういう面倒なことはせず、圧倒的な競争力のある製品を販売しているマイクロソフト・グーグル・インテルの方がはるかに儲かっている。

 

現実には、他社を寄せ付けない競争力のある製品を開発するのは難しいので、だんだんと競争の舞台はコンサルティングに移っていく。ただ、企業は、決してコンサルティング営業が理想ではないことを理解し、「貧乏暇なし」の状態にならないよう、効率的な事業運営やコンサルタントの育成を心掛ける必要がある。

 

(2019年3月18日、日沖健)