前澤社長にはどんどん派手にやってほしい

 

今年1年を振り返ると、色々な企業経営者が話題になった。その中で日産カルロス・ゴーン会長を除いて最も注目を集めた経営者と言えば、ファッションサイトZOZOTOWNを運営するZOZOの前澤友作社長であろう。今年前澤社長は、採寸専用のZOZOスーツを無料配布し、ファッション業界を騒然とさせた。私生活では、タレント・剛力彩芽と交際が週刊誌を賑わせた。民間人初の月周回計画をぶち上げ、国民を啞然とさせた。

 

前澤社長については、マスメディアやネットで賛否両論がある。全般的に言うと、ZOZOTOWNを成功させ、ZOZOスーツなどイノベーションに取り組むなど、ビジネス面の評価は高い。しかし、剛力彩芽との交際や月周回計画といった私生活には、「成金が調子に乗るな」「事業に専念しろ」といった批判的な声が多いようだ。評論家の江口克彦氏は、「そんな金があったら寄付しては?」と指摘している。

 

しかし、私は個人的には、表題の通り前澤社長にはどんどん派手に立ち回っていただきたいと思う。社長業が国民にとって憧れの存在になって欲しいからだ。

 

アメリカのCEOと日本の社長には、報酬が多い少ない、権限が大きい小さいなど色々な違いがあるのだが、私が最も気になる違いは、国民から見て憧れの存在か否か、という点である。

 

アメリカでは、マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ・ジョブズ、フェイスブックのマークザッカーバーグなど魅力的な起業家が次々と出現している。若くして革新的な事業を起こし、世の中を発展させ、世の中のトレンドを変えており、まさにアメリカ経済の主役である。ビジネスだけでなく、政治・文化面の発言も実にカッコ良く、アメリカだけでなく、世界中の人々が憧れる存在だ。

 

それに対して日本では、社長は国民にとって憧れ、尊敬の対象ではない。日本を代表する大企業が集まる経団連では、会長・副会長19名全員がサラリーマンで、起業どころか一回も転職の経験がなく、ほぼ全員が年金支給年齢に達するおじいちゃんだ。組織の中で耐え忍んで頂点に立った忍耐力や大組織を率いたマネジメント能力には敬服するものの、まったくカッコ良くない。一般国民へのアピール度はほぼゼロだ。

 

アメリカでは、「起業家になりたい」という中学生・高校生がよくお目にかかるが、日本の若者にはユーチューバーやゲーマーが人気で、社長業は不人気だ。ただ、将来も不変とは限らない。野球は長く人気が低下傾向だったが、イチローや大谷翔平を見て野球少年が増えているように、ロールモデルが現れれば状況は大きく変わるのではないか。

 

日本人の社長に対する見方を変え、起業家を増やすロールモデル、切り込み隊長として、前澤社長には大いに期待したい。前澤社長が活躍すれば、「社長ってあんなに稼げるんだ」「あんな冴えないオッサンでも(失礼)若いタレントを抱けるんだ」「ハワイどころか、月にも行けるんだ」ということで、起業家を目指す若者が増えるのではないだろうか。

 

若者がどういう職業を選択しようが、もちろん個人の自由だ。しかし、新しいアイデアを生み、それを事業という形にし、人を使って経営する起業業は、おそらくこの世で最も難易度が高い職業ではないだろうか。難易度や社会の貢献からすると、もっと注目され、憧れの対象となって良い職業だ。

 

また、マクロ経済的に見ても、優秀な若者がユーチューバーやゲーマーとして1億円稼ぐ日本と起業家として1兆円のビジネスを作るアメリカ、どちらの経済が発展するか言うまでもないだろう。

 

前澤社長には、世間の雑音を気にせず、来年はもっともっと派手に活躍し、日本を変えて欲しいものである。また、第2、第3の前澤社長の出現に期待したい。

 

(2018年12月31日、日沖健)