プロとアマの違いって、なんだっけ

 

中学1年の頃にジャズを聴き始めて40年になる。長いこと聴いていると、それなりに耳が肥えてくる。しかし、プロのミュージシャンとアマの違いは、よくわからなかった。

 

もちろん、平均的なプロと趣味でライブ活動をしている平均的なアマでは、演奏技術に格段の違いがある。しかし、ジャズは儲からない商売なので、卓越した演奏技術を持っているのに、経済的理由でアマにとどまり続けるミュージシャンが多い。平均的なプロとトップアマだと、演奏技術に違いはない。

 

演奏技術に違いがないなら、いったい何が違うのか。最近思うのは、誰のために演奏するか、という点だ。

 

アマは、自分のために演奏する。自分の好きな曲を選び、自分の好きな演奏スタイルで、場の雰囲気や観客の反応に関係なくマイペースで気持ち良さそうに演奏する。

 

プロは、客のために演奏する。イベントの主旨・時期・客層に合った曲を選び、曲に合った演奏スタイルを選び、場の雰囲気や観客の反応に合わせて柔軟にステージを仕上げる。

 

演奏そのもののレベルは変わらなくても、確率的に、観客に合わせて演奏するプロのステージの方が盛り上がり、観客は満足しやすい。ぱっと見には小さな違いだが、聴く側にとっては重要な違いで、「さすがはプロ!」と感じることがたびたびある。

 

ということで、趣味のジャズについては40年経ってプロとアマの違いが少しわかってきた。ところが、肝心のコンサルタント業については、中小企業診断士の資格を取得して23年、独立開業して16年経っても、いまだに違いがわからない。

 

コンサルタントも(ジャズミュージシャンと同様に)独立して活動するのは経済的に厳しいので、中小企業診断士を取得しても大半が企業内にとどまる(以下、企業内診断士)。そして、週末を利用してコンサルティングをする場合がある。

 

平均的な独立診断士(以下、プロコン)と平均的な企業内診断士を比較すると、クライアントの問題を発見し、解決策を生み出すというコンサルタントの基本能力は、さほど変わらない。最近は試験の難易度が上がり、極めて優秀な若手しか合格できないので、頭がボケてきた高齢のプロコンよりも、企業内診断士の方が能力はむしろ上だろう。

 

明らかに違うのは経験だ。プロコンはコンサルティング案件を多数経験しているので、プロジェクトの進め方やリスク管理などツボを心得ている。そのため、実際にコンサルティングをやったら、プロコンの方が高確率で成果を実現することができる。

 

ここで、「コンサルタントの世界では、プロとアマに本質的な違いはなく、経験が多いか少ないかという違いだけなのか?」という疑問が出てくる。

 

この疑問を何人かのプロコンにぶつけたところ、「残念だけど、そういうことになるんでしょうね」という同意が多かった。

 

個人的に、経験以外にプロとアマで違うと思うのは、クライアント(顧客)との向き合い方だ。

 

企業内診断士やコンサルティング・ファームに勤めるサラリーマン・コンサルタントは、クライアントが直面する問題に対して良い解決策を提供することには熱心だ。しかし、解決策を生かしてクライアントが成果を実現するかどうかには熱心ではない。というより、企業勤務の制約から、クライアントととことんお付き合いすることはできない。うまく行くも行かないもクライアント次第、となってしまう。

 

それに対して優れたプロコンは、解決策を提供するだけでなく、クライアントが実際に成果を実現することにこだわる。どんなに素晴らしい解決策を提供しても、成果が出てクライアントが満足しないと、自分の市場での評価が落ち、次の仕事がなくなってしまうからだ。

 

ただ、「俺は成果実現にこだわっている!」と胸を張るのはプロコンの勝手な思い込みで、クライアントはそれをあまり評価していない可能性がある。プロとアマの違いは難しい問題で、私にとってはやはり謎である。

 

(2018年12月24日、日沖健)