選択のあり方を変えよう


 

このたび『後悔しないためのロジカルな意思決定 スマートチョイス』と題する書籍を刊行した。生活やビジネスで行う選択(=意思決定)の進め方についてわかりやすく解説しているので、是非お読みいただきたい。

 

私たちは、進学・就職・結婚・転居といった節目で選択をする。また「今日はランチに何を食べようか」「傘を持って行こうか、手ぶらにしようか」などと日常的に選択を繰り返している。では、たくさん選択をしているから選択に卓越しているかと言うと、そうでもない。勘と経験と度胸で間違った選択をしてしまったり、選択するべき時に躊躇したりして、後悔することが多いのではないだろうか。

 

選択がうまく行かなくても、われわれはきちんと振り返ることをしない。振り返ったとしても、「優柔不断な性格なので・・・」「おっちょこちょいな性格でして・・・・」と性格のせいにする。たしかに、性格が選択という行為に大きな影響を与えることは間違いない。しかし、優柔不断な人でも慎重に検討して良い選択をできることがあるし、逆に思い切りの良い人が思い切り選択を間違えてしまうことは多い。

 

性格よりも大切なのは、正しいプロセスを踏んでロジカルに考えて選択することだ。では、正しいプロセスとはどういうことなのか、ロジカルに考えるとはどういうことなのか。詳しくは本書に譲るが、重要ポイントを3点だけ。

 

第1に、良い選択テーマを取り上げることだ。選択の第一歩は、どのようなことについて選択するか、というテーマ設定である。

 

iPS細胞を発明した山中伸弥教授は苦手だった外科手術にこだわらず、方向転換し、研究の道に進むという選択をした。もし山中教授が「いかに手術をうまくなるか?」という選択テーマを設定し追求していたら、偉大な成功はなかっただろう。とくにキャリアの選択では、自分を成長させ、世の中の発展に貢献できる良い選択テーマにこだわる必要がある。

 

第2に、決定・実行する前に考えうるすべての選択肢を列挙することだ。

 

選択では、パッと思い付いた解決策に飛びついて、実行した後に別のより良い選択肢が見つかり、後悔するということがある。パッと思い付いた選択肢がベストの選択肢とは限らないから、まずは良い・悪い、好き・嫌い、できる・できないといったことを考えず、すべての選択肢を列挙するべきだ。

 

第3に、非合理的にならないよう注意したいものだ。

 

人間の思考は、完全に合理的でもまったく非合理的でもなく、限れらた情報の中で限定合理的であると言われる。損失回避を過度に意識したり、不採算事業を「過去の投資がもったいない」と継続したり、他人の意見になんとなく同調したりする具合だ。非合理的な選択を避けるのは難しいが、非合理的な選択の代表的なパターンを知っておくと、大きな失敗は避けられるだろう。

 

私たちは、選択の「内容」についてはそこそこ学ぶが、選択の「進め方」についてはあまり学ばない。たとえば資産運用で金融商品を選択する場合、金融機関に相談すれば、どういう金融商品があり、どういう特徴があるのか、懇切丁寧に教えてくれる。しかし、どのように情報を集め、どう分析し、どういう基準で選択するか、といった選択の進め方は教えてくれない(正しい選択方法を教えると、金融機関にとって利益率の高い商品が売れなくなってしまう)。

 

生涯、何千回・何万回と行うのに、学校の授業でも企業の教育訓練でもないがしろにされてきた選択。本書で正しい選択の進め方を学び、生活をビジネスをより良くしていただきたい。

 

(2018年10月29日、日沖健)