若いコンサルタントが求められている

 

コンサルタントとして活動していると、クライアントや知人から「〇〇という専門性を持ったコンサルタントを紹介してください」と依頼されることがよくある。「ネットで検索すれば5分で済むだろ」と思われるかもしれないが、これが意外と難しいことなのだ。

 

現在私は、古くなった人事制度を再構築したいというある会社から人事コンサルタントの紹介を依頼されている。この件を例に、コンサルタントの紹介について考えてみよう。

 

今回、その会社は、実務経験が豊富な人事コンサルタントを求めている。世の中には人事コンサルタントを名乗る人は多いが、大半は「人事コンサルタント養成講座に3日間通いました」という程度だ。企業の人事部門に所属して賃金テーブルを書いた経験を持つ人事コンサルタントは限られる。

 

もう一つ、年齢も条件になっている。その会社は、50歳未満の若いコンサルタントを希望している(コンサルタントの世界では、50歳までなら十分に若手!)。現在その会社が契約しているコンサルタントが高齢になったことから、代わりに若いコンサルタントを起用して今後長く付き合ってほしいというわけだ。

 

しかし、若いコンサルタントを探すというのは、意外と難しい。個人で活動する人事コンサルタントは、企業の人事部門に長年勤務し、定年後に開業するというパターンが多い。経験不問ならともかく、実務経験のある人事コンサルタントというと、かなり高い確率で高齢者になってしまうのだ。

 

現時点ではこの段階で止まっているが、仮に条件に合う候補者が見つかったとしても、報酬で合意できるか、スケジュールが合うか、という問題がある。人気コンサルタントは相当先まで予定が埋まっていて、新たに大型案件を受注できないということがよくあるのだ。

 

こうした外形的な条件をすべてクリアしても、人として信頼できるかどうか、という難関が待ち構える。コンサルタントは、経営者と信頼関係を築き、二人三脚で経営改善を進める。ときには経営者にとって耳の痛いことを言わなければならない。経営者がこれらを受け入れるかどうかは、コンサルタントの人間性にかかっている。さらに、社長が「このコンサルタントとはなんとなく相性が合わなさそう」と言い出して破談になることも珍しくない。

 

こうしてみると、コンサルタントを紹介するというのは、現代のお見合い結婚に近い難易度の高い作業であると言える。たいていの場合、結婚と同じように、条件を大幅に緩めてどちらかのコンサルタントに依頼するのだが・・・。

 

ところで、この問題と関連して最近実感するのは、若いコンサルタントへのニーズが確実に増えているということだ。今回もそうだし、他の会社からも「ガッツがあって、一緒になって頑張ってくれる若いコンサルタントを紹介してほしい」と言われることがよくある。

 

残念ながら、若手コンサルタントへのニーズが増えているのに、対応できる人材が非常に少ない。正確に言うと、コンサルティング会社に所属する頭の良い若手コンサルタントはいるが、リスクを取って独立開業し、「いっちょ、やってやるぞ!」と気概を見せる生きのいい若手コンサルタントは少ないのだ。

 

私は、この12年ほど中小企業大学校の中小企業診断士養成課程で教えており、毎年約150人の新たな中小企業診断士と知り合いになっている。毎年数2~6名の受講者から独立開業について相談をいただくが、実際に独立開業する方は少ない。大半の受講者からは、「独立開業なんて怖くて、とても無理ですよ」と言われる。

 

ただ、コンサルタントは事業資金がほとんど必要なく、起業しやすい。しかも若手は、介護だ、教育資金だと何かと生活に入り用が多い中高年よりも、さらにハードルが低い。昔は独立開業して失敗したら一家心中だったが、今は転職市場が発達したので、ダメだったらサラリーマンに戻れば良い。そんなに怖がることでもないという気がする。

 

今後、コンサルタントに挑戦する若手がどんどん増えて欲しいものである。

 

(2018年7月9日、日沖健)