東京オリンピックで日本を変えよう

 

17日間に渡って熱戦を繰り広げた平昌オリンピックが閉幕した。北朝鮮に主役の座を奪われるなど首を傾げる面も多々あったが、日本選手が大活躍したことと無事に全日程を終えたことを喜びたい。

 

さて、次はいよいよ1年半後の東京オリンピック。今回の学習・反省を生かして、良い大会にしてほしいものである。

 

前回1964年の東京オリンピックでは、日本が見事に戦後復興したことを国際社会にアピールした。と同時に、東海道新幹線や首都高速道路が開通するなど社会が大きく変わった。今回の東京オリンピックでも、日本が健在であることをアピールするとともに、社会を大きく変えてほしいものである。

 

まだインフラ(ハード)が未整備だった前回大会と違って、成熟社会の今回は、ソフト面の変革が中心になる。個人的に期待しているのは、以下の3点だ。

 

第1は、Wi-Fiの無料接続(これはハードに近いが)。日本では、空港など限られた場所でしかWi-Fiの無料接続が利用できず、訪日観光客・ビジネスパーソンに非常に評判が悪い。駅・ホテルといった公共性の高い場所は当然として、できれば日本国内どこでもWi-Fi無料接続を実現してほしいものである。

 

第2は、英語での表示。日本では、道路標識など各種案内表示はたいてい日本語オンリーだ。飲食店の英語メニューもまだまだ普及していない。少なくとも公共交通機関・公共施設や外国人がよく利用する飲食店・ホテル・商業施設などでは、英語の表示をしてほしいものだ。

 

第3は、屋内全面禁煙。先進国では屋内や公共スペースでの全面禁煙が当たり前になっている。日本でも厚生労働省を中心に屋内禁煙を推進しているが、例外措置が多く、骨抜きになっている。飲食店などの例外を認めず、全面禁煙にしてほしいものである。

 

いずれも決して特別なことではなく、世界に開かれた先進国として当然の責務と言って良い。しかし、現実は厳しい。2007年にWHOから勧告を受け、国民の多くが賛成している屋内全面禁煙でもなかなか進まないくらいだから、巨額の費用が必要なWi-Fi無料接続や国民が必要性を感じていない英語化は、さらにハードルが高いことだろう。

 

理想は国民のコンセンサスを形成し、法律を作って全国的に推進することだが、たった1人1000円の出国税の導入で揉めているように、なかなか難しそうだ。ならば、東京23区、あるいは山手線の内側などエリアを限定して展開するのはどうだろう。山手線の内側でWi-Fi無料接続と英語の公用語化を実現すれば、オリンピックだけでなく、国際都市としての東京の競争力が格段に向上することだろう。東京が成功すれば、大阪が、名古屋が、横浜が負けじと後に続く。

 

国家でも、企業や個人も、いつも通り普通に動いている状態で、制度や慣行を大きく変えるのは難しい。しかし、危機的な状態に陥った時やオリンピックのような大きなイベントを目前にすると「よし、変えてみるか!」となる。安倍首相や小池都知事には、東京オリンピックを「つつがなく終える」のではなく、日本社会を変えるきっかけにしてほしいものである。

 

(2018年2月26日、日沖健)