週刊誌と二人の小室さん

 

二人の小室さんを巡って、週刊誌の報道がクローズアップされている。

 

週刊文春は昨年12月、音楽プロデューサー小室哲哉さん(59)がくも膜下出血でリハビリ中のKEIKO夫人を介護するかたわら看護師と不倫しているという疑惑を報道した。この報道を受けて、小室さんは1月に芸能界からの引退を表明した。

 

引退発表直後から、週刊文春のツイッターには「報道はやりすぎだ」「小室さんを返せ」といった批判が殺到している。ダルビッシュら著名人も、週刊文春を批判している。この数年、重大スクープを連発して“文春砲”と呼ばれ喝采を浴びた週刊文春だが、一転守勢に立たされた。

 

一方、週刊女性は昨年12月、秋篠宮家の長女眞子さま(26)と婚約している小室圭さん(26)の母親が元婚約者とされる男性から400万円以上を借りて返済していないと報じた。これを皮切りに各誌が小室圭さんや家族の様々な問題点を報じた。先週、宮内庁は婚礼儀式の延期を発表した。宮内庁は否定するが、一連の報道を受けた措置と思われる。

 

小室圭さんに関する報道に対し、国民は概ね肯定的だ。「報道を控え、二人を暖かく見守るべき」という意見は少数派で、「小室さんは眞子さまにふさわしくない。もっと良い人がいる」「結納・結婚する前にわかって良かった」という意見が大勢を占める。

 

週刊文春も週刊女性も、ともに著名人のスキャンダルを暴いただけだ。にもかかわらず、方や週刊文春は国民からバッシングを浴び、方や週刊女性は感謝されている(直接的に「眞子さまを救ってくれて週刊女性ありがとう!」という声はあまり聞かないが)。本質的に同じことをして、まったく正反対の反応を呼んでいるわけだ。

 

最近、週刊誌の報道姿勢が問題になるが、おそらく国民は、報道姿勢そのものを問題にしておらず、報道によってもたらされた結果を重視しているのだろう。「病気の妻を介護する小室哲哉さんがちょっと魔が差して不倫しただけなのに、週刊文春のせいで引退に追い込まれたのは許せない」「眞子さまが胡散臭い小室圭さんと結婚するのを週刊女性のおかげで未然に防げて、眞子さまのためによかった」というわけだ。

 

ということで、国民は口で言うほど週刊誌の報道姿勢のことを考えていないのだが、個人的には広い意味でマスコミの報道姿勢には関心、というより危機感がある。

 

国際NGOの国境なき記者団が公表した2017年「報道の自由度ランキング」によると、調査対象の180カ国・地域のうち日本は72位、主要国7カ国(G7)で最下位になった。近年、政府によるマスコミへの干渉が強まり、2010年の11位をピークにランキングは劇的に低下している。

 

また、近年インターネット・SNSによる情報発信の広がりで新聞の販売部数やテレビの視聴率は低下傾向にあり、マスコミ各社は国民受けを狙って低俗な報道をするようになった。マスコミに圧力を加える政府と低俗な報道を目指すマスコミの組み合わせで、権力の牽制や世論形成といったマスコミの本来の機能は著しく低下してしまった。

 

こうした中、週刊誌は身軽な立場を生かして国民目線で自由な報道をし、権力の牽制や世論形成に一定の役割を果たしている。やや大袈裟に言うと、報道の自由を体現する、日本に残された数少ない良心的なメディアだと言える。

 

週刊誌の過熱報道には人権侵害の問題があり、手放しで喜べるわけではない。だからと言って、文春バッシングが高じて「週刊誌は報道を自粛しろ」「週刊誌なんて廃刊してしまえ」といった間違った方向に行かないようにしてほしいものである。

 

(2018年2月12日、日沖健)