コンサルティング会社が就活で人気

 

人手不足でかつてない買い手市場と言われる大学生の就職市場。大手一流企業でも採用活動で大苦戦する様子がたびたび報道されている。こうした中、涼しい顔で高笑いが止まらないのが外資系コンサルティング会社だ。

 

日本経済新聞社・マイナビが大学生全体を対象に調査した就職人気ランキングによると、文系では全日空、理系ではソニーがトップで、相変わらず伝統的な大企業が人気を集める。ところが、就活サイト「ONE CAREER」の調査によると、東京大学・京都大学の学生については、1位がマッキンゼー・アンド・カンパニー、3位がボストン・コンサルティング・グループで、なんと上位10社中8社が外資系コンサルティングファームだ。伝統大企業は6位の三菱商事1社にとどまる。

 

かつて、東大・京大の学生と言えば、国内大手企業か中央官庁に進むのが定番で、外資系企業に進むのは相当な変わり者だった。古い話で恐縮だが、私の知人の東大生(1989年卒)は、外資系金融機関に就職しようとしたところ両親に猛反対され、やむなく都市銀行に入った。世の中、変われば変わるものである。

 

コンサルティング会社が人気の理由は、コンサルティングが知的な職業であること、教育が充実しており入社後短期間でスキルが高まること、若い頃から実力主義で高い給料を期待できることなどである。東大・京大の優秀な学生は、若い頃は下積み仕事が多く、同期横並びで低賃金の日本の大企業を見限って、コンサルティング会社を目指しているわけだ。

 

ただし、優秀な学生にとってコンサルティング会社に入るのがベストの選択かと言われると、ちょっと疑問だ。アメリカでは、「実力がない者は他人に使われて作業をする(会社員)、実力があるが自分に自信がない者は他人にアドバイスをする(コンサルタント)、実力も自信もある者は他人を使って事業をする(起業家)」と言われる。

 

東大生の起業というと、リクルートの江副浩正が贈賄罪で、ライブドアの堀江貴文が有価証券虚偽記載で有罪になっている通り、胡散臭さが漂う。しかし、アメリカでは、ハーバード大学を中退してマイクロソフトを起業したビル・ゲイツに代表されるように、優秀な学生ほど起業を目指す。東大・京大の学生も、頭が良いだけでなく本当に自分に自信があるなら、起業を目指すべきではないだろうか。若い頃なら起業に失敗してもやり直しがきくし、そこから企業に就職するのも難しくない。

 

東大・京大の学生が大企業を見限ったのは、職業として魅力が乏しいという点もさることながら、かつては入社すれば一生安泰だと思われた東芝・日産・日本航空・長銀などが凋落・破たんしたことが大きい。学生にとって絶対的な「安定」が失われたわけだ。

 

外資系コンサルティング会社では、社員同士の競争が激しいし、実力主義が徹底しているので、同期入社でも給料に大きく差が付く。したがって「不安定だ」と言われる。ただ、やっている仕事は企業経営者の意思決定を外部から論評するだけで、リスクを取っているわけではない。能力が高い人にとっては、リスクが小さく、ある意味安定した仕事だ。

 

私の目には、大企業という安定した就職先を失った学生が、新たな安定した居場所を求めて外資系コンサルティング会社を目指しているようで、安定志向という本質はあまり変わっていないように映る。また、(コンサルタントの私が言うのもなんだが)他人のやることにチャチャを入れるのが理想の職業だと前途有望な若者が考えているとしたら、非常に残念なことである。

 

(2018年2月5日、日沖健)