ランキングの改革が必要だ

 

先月、毎年恒例の「住みたい街ランキング」が発表された。吉祥寺の1位は変わらないが、武蔵小杉が初めて2位になったこと、浦和や北千住が初めてベスト10入りしたことが話題を呼んだ。私の周りでも、「浦和に住んでるけど、そんなに良い街とは思わないなぁ」「地元の北千住が注目されるのは嬉しい」といった声を耳にした。

 

一方、このランキングには、醒めた見方も多い。マンション販売の長谷工アーベストが調査・発表しており、近年、大型マンションの建設ラッシュで湧く武蔵小杉などが上位にランクされていることから、「業者がマンションを売りたい街ランキングでしょ」とよく言われる。

 

それよりも個人的に気になるのは、ランキングの設計が悪く、有用性が低いことだ。

 

長谷工は、登録した首都圏のモニター3千名弱にアンケート調査をしている。マンション業者のモニターということは、マンションを購入したか、購入を検討している人、しかも比較的若い人たちだろう。「住みたい街」というより、「魅力的なマンションがある街」ということになる。

 

このランキングを以て、よく「吉祥寺が日本で最も素晴らしい街だ」と言われるが、いかがなものか。高校生を対象に調査した「大学人気ランキング」で1位は明治大学だが、普通「明治大学が日本一の大学」とは言わない。明治大学が高校生に人気なのは、社会的評価・知名度などそこそこ高い割に、東大・京大ほど入試難易度が高くなく、普通の高校生でも「頑張れば入学できるぞ!」と思えるからだろう。住宅地で東大・京大と言えば麻布・田園調布・松濤などで、吉祥寺や武蔵小杉は明治大学や青山学院大学というところで、「一般庶民が何とかマンションを買えそうな範囲で良いの街」である。

 

ということで、住みたい街ランキングは「おいおい」と眉唾物なのだが、ランキングの胡散臭さは、住みたい街ランキングに限らない。結婚したい芸能人ランキング、上司にしたい有名人ランキングなど、馬鹿馬鹿しいランキングは枚挙にいとまがない。

 

芸能・趣味系のランキングは、興味がなければスルーすれば良いのだが、教育・経済・ビジネス・政治といった領域のランキングは無視できない。

 

大学のランキングというと、先ほどの人気ランキングを除くと、予備校が入試模擬試験の偏差値を並べたものしか存在しない。入試の偏差値は一つの尺度にすぎず、もっと多様な尺度、意味のある尺度で評価するべきだ。アメリカでは、教育水準・研究成果・卒業生の平均年収など多様な尺度で大学を評価することが行われている。しかも、MBAだけでも10種類以上の有力なランキングがあるなど、数が多い。

 

日経新聞などが公表する優良企業ランキングはさすがによく設計されていて質が高いが、信頼できるランキングの数やランキングの多様性という点では、やはりアメリカに大きく見劣りする。そして、もっともお粗末なのが、政治・社会に関するランキングだ。日本では民間のシンクタンクが発達しておらず、政府機関を除くと、有用な調査・ランキングが極端に少ない。

 

「ランキングなんてどうでも良いだろ」と思われるかもしれないが、そうではない。CSRランキングが公表されると、企業は競ってCSRへの支出を増やす。女性活用ランキングが公表されると、女性管理職の登用を増やす。企業や人は、明確なポリシーに基づき一貫して行動しているわけではなく、ランキングの評価を気にして、行動を変えるのだ。

 

教育・経済・ビジネス・政治系で質の良いランキングを増やすには、どうすればよいだろうか。

 

日本では、経済・社会など多くの領域で中央省庁や自治体、それらの外郭団体が調査・ランキング作成を担っている。こうした公的セクターがコスト度外視でランキングを作成し、無料で提供していることが、民間のシンクタンクの発展を妨げている。典型的な民業圧迫であり、この状況を抜本的に変える必要がある。

 

省庁・自治体の調査業務をスリム化し、どうしても外部委託できないもの以外は調査を実施することを禁じる。調査業務のスリム化で人件費が浮いた分、外部購入するように誘導する。また、民間企業が行う公益性にあるランキングに補助金を出すことも考慮したい。

 

アメリカで政治システムやMBAが発達したのは、民間調査機関・民間企業によるランキングのプレッシャーの影響が大きい。たかがランキングと思わず、日本でも改革を期待したいものである。

 

(日沖健、2017年10月2日)