フリーランスの働き方は変わるか?

 

経済産業省は先週17日、企業と雇用契約ではなく請負契約などを結んで働くフリーランス人材を活用することを目的に、有識者で作る「雇用関係によらない働き方」に関する研究会を発足した。ITなどの専門技術者や出産、育児で企業を退職した女性の新しい労働の形を模索し、安倍政権が進める「働き方改革」に取り入れるのが狙いだ。

 

IT技術の発達などにより、時間や場所にとらわれずにインターネットで仕事を請け負うなど、フリーランスとして働く労働者が増え、その数は1,064万人と推計されている。今や労働者の6人に1人がフリーランスだ。

 

フリーランスというと、通勤地獄がなく、好きな時に好きなだけ働くことができ、会社での煩わしい人間関係とも無縁、とバラ色の生活を思い浮かべるかもしれない。しかし、実際は、低収入と長時間労働が横行する、超ブラック仕事だ。フリーランスが充実した職業生活を送ることは国家的な重要課題であり、今回の検討でフリーランスを巡る諸問題が解決することを期待したい。

 

フリーランスでは、低収入と長時間労働の2つがよく問題視される。ただ、フリーランスは低収入を補うために単価の安い仕事をたくさん引き受けて長時間働いており、実質的には収入が少ないことが問題だ。収入は受注量×受注単価であるが、受注量が増え、フリーランスの業務の需給が締まれば、受注単価も上がる。よって真の問題は、フリーランスの受注量が少ないことである。

 

フリーランスが十分な量の業務を受注できないのは、一つは受注チャネルの制約、もう一つは信用の問題がある。

 

子育てが一段落した主婦を中心に、フリーランスとして働きたいというニーズは大きい。また、中小企業ではシステム構築などたまにしか行わない業務のために専門人材を雇用するのは非効率なので、フリーランスに業務を委託したいというニーズも大きい。ところが、両者のニーズをマッチングさせる良いチャネルがなく、フリーランスの受注は低水準にとどまっている。

 

近年、「ランサーズ(Lancers)」「クラウドワークス(Cloud Works)」といったクラウドソーシングのサイトが増え、利用者も着実に増加している。最大手のランサーズは2008年の創業で、これまでの累計取り扱い額は1,027億円に達する。この数字をどう見るかは微妙なところだが、個人的には1桁大きくなってもおかしくないと思う。今後の発展を期待したい。

 

それよりも問題は、信用だ。フリーランスは、会社に所属する専門家と比べて信用が低く、受注を逃すことが多い。フリーランスは玉石混交だし、会社組織と比べて信用が低いのは当然だが、それにしても、フリーランスというだけで門前払いを食わされることが多いように思う。

 

とくに問題なのが、大企業や公的機関だ。日本では、フリーランスを活用するのは中小企業に限定され、大企業や公的機関は活用に消極的だ。

 

大企業については、「社内に人材が豊富なので、わざわざフリーランスを活用する動機がない」とよく言われる。しかし日本企業には、余剰人員だが解雇していない“隠れ失業者”が数十万人おり、「遊ばせておくよりは・・・」とやむなく彼らに業務を与えている。人件費が高い余剰人員が質の悪い業務をするよりも、さっさと余剰人員を整理し、フリーランスを活用する方が、企業にとってもメリットが大きいのではないだろうか。

 

公的機関は、契約相手を法人に限定している場合が多い。また、過去の実績を重視して業務委託することが多く、フリーランスが新規に入り込む余地が乏しい。ここは、国が主導して、契約相手を法人に限定することを禁止するとともに、フリーランス活用の数値目標を設定し、活用を促していくべきだ。「まず隗より始めよ」である。

 

好きな時に好きなことを好きなだけやるというのは、労働者の本来あるべき姿である。今回の改革が成果を生み、フリーランスのみならず、日本の労働者の働き方が大きく変わることを期待したい。

 

(日沖健、2016年11月21日)