ビジネスに効く人脈づくりのコツ

 

私事だが、1988年に日本石油(現・JX)に入社して14年間勤務し、2002年6月にコンサルタントとして独立開業し、今年で14年経つ。サラリーマン生活とコンサルタント生活が今月で丁度同じ長さになった。「ここまでコンサルタントを続けてこられたのは、関係する皆様のご支援のおかげです。本来、一人一人に感謝を伝えるべきだが、ここに記させていただきます。ありがとうございます。」

 

「皆様のご支援のおかげ」と言うと白々しく聞こえるかもしれないが、本心だ。コンサルタントの世界では、人脈が極めて重要だからだ。私の最初のクライアントは、会社時代の先輩Jさんの紹介だった。最近は出版物の読者やセミナー参加者から直接問い合わせをいただくことが多いが、それでも14年間を振り返ると知人など関係者から仕事を紹介していただいたケースが断然多い。

 

この10年ほど中小企業大学校の中小企業診断士養成課程で教えており、コンサルタントの卵である受講者の皆さんからビジネスに効く人脈づくりの方法をよく質問をいただく。私は決して“人脈づくりの達人”というわけではないが、ポイントを4つ紹介しよう。

 

第1に、現在の仕事で手を抜かないことだ。よく「日沖さんは会社時代からクライアントを開拓していたんですか?」と聞かれるが、フライングはしていない。溜まっていた有休も取らず退職前日まで普通に仕事を続けた。会社にとって退職した私は顔を見たくない存在のはずなのに、人事部長のSさんやグループ会社社長のFさんなどたくさんの会社関係者の方が「たまには会おうや」とお声掛けしてくださる。これは、会社時代にまじめに仕事に取り組んだ結果だと思う。

 

会社の仕事はほどほどに異業種交流会などにせっせと通うサラリーマンを見受けるが、いかがなものか。ビジネスの人脈は、携わっている仕事を中心に広がることが多く、「いい加減な仕事をするやつ」と思われては逆効果だ。現在の仕事で手を抜かず、関係者から信頼を得ることが、人脈づくりの第一歩である。

 

第2に、まじめに仕事に打ち込むだけでなく、自分の活動や知識・ノウハウを発信する必要がある。ビジネスでは、自分にはない専門知識やノウハウを人脈に求める。どういう知識・ノウハウを持っているのかを広く発信することで、多方面から声が掛かるようになる。

 

コンサルタントなら、自分の知識・ノウハウや活動成果を出版物として公表したいところだ。難しいなら、ブログを書くことでも良いだろう。私は独立してから1年1冊以上のペースでビジネス書を出版している。また、14年間毎週欠かさずホームページに「経営の視点」を更新している。本を書くのは簡単なことではないが、出版する・しないで人脈の広がりが全然違ってくる。

 

第3に、人から「会おう」と誘われたら断らないことだ。よく「役に立たない人と会っても時間の無駄。役に立ちそうな人を厳選して付き合え」とアドバイスをする専門家がいる。たしかにそうなれば最高に効率良いが、役に立つかどうかは会った結果わかることだ。最初に会う段階で役に立つかどうかはわからないから、とにかく会ってみるしかない。

 

私は明らかに時間の無駄だと推測できる場合を除いて、誘われたらできるだけ会うことにしている。時間の無駄だったと思うことの方が圧倒的に多いが、わざわざ「会おう」と声を掛けてくれるのは、何らかの点で自分に関心を寄せてくれているわけで、末永い関係に発展するケースが意外と多い。

 

第4に、会合の幹事を買って出ると良い。フェイスブックの時代とはいえ、構築した人脈を維持・発展させるには実際に会う必要がある。待っていてもそういう機会はなかなか訪れないので、自分から積極的に幹事役を務めて会合を設定するべきだろう。

 

相手を選び、誘い、日程調整し、場所を予約し、案内を出すという作業は、多忙なコンサルタントにとって面倒なことだ。しかし、こうした雑事をいとわずマメに動くかどうかが、人脈の形成、ひいてはビジネスの成功を左右するのだと思う。

 

最後にもう一点、ノウハウではないが、人が好きであることは絶対的に大切だ。以上の4つのポイントを実践するのはそれなりに面倒なことで、仕事のために仕方ないから、と考えると長続きしない。人が好きで、人に会うことが楽しい(少なくとも苦痛でない)という人でないと、コンサルタントを続け大成するのは難しいだろう。

 

(日沖健、2016年7月11日)