経営者のプライベートはどうあるべきか

大谷翔平のプライベートが世界中の注目を集めている。31日に結婚を発表し、お祝いムード一色に包まれた。と思ったら、先週、専属通訳の水原一平氏が違法賭博で球団から解雇され、衝撃を呼んでいる。シーズンが始まったばかりの重要な時期、後者については一刻も早く事態が収拾することを期待したいものである。

ところで、企業経営に目を移すと、プライベートがよく話題に上る経営者もいれば、まったく話題に上らない経営者もいる。経営者のプライベートと会社の業績はいったいどういう関係にあるのだろうか。

我々は、業績の良い一流企業の経営者には、プライベートでも従業員や一般人の模範になってくれることを期待する。家族を愛し、高尚な趣味を持ち、ボランティア活動をし、ギャンブルや違法行為など以ての外…。

しかし、私の知る限り、経営者のプライベートと会社の業績はほとんど関係ない。

プライベートが模範的な経営者がたまにいるが、たいてい肝心の会社の業績がサッパリである。逆に、経営者はギャンブル・女・酒が好きで、バレない程度に違法行為もちょくちょくなのに、会社が業績好調というケースもある。稲盛和夫さんのようにプライベートが模範的で会社の業績も好調というケースは、極めてまれだ(だから尊敬されている)。

とすれば、その会社に就職や投資をするとき、経営者のプライベートを気にする必要はないのだろうか。そうとは限らない。

かつて長者番付で日本一になった投資家・清原達郎さん(昨年、引退)は、新たな投資先を探すとき、目ぼしい会社の社長に会って、インタビューする。そして、「社長、先週・先々週の週末、どうやって過ごしましたか」とプライベートを聞く。

清原さんが期待しないのは「ゴルフやってました」「家族と楽しく過ごしました」といった答え、逆に期待するのは「会社の長期的な構想を練っていました」「ちょっと会計が苦手なので勉強していました」といった答えだ。

中堅以下の会社の経営者は、平日の昼間はととにかく忙しい。会議に出席し、部下に指示を出し、トップ営業し…。それ以外のことにじっくり腰を据えて取り組むのは、どうしても平日の夜か週末になってしまう。

何を考えたか、何を勉強したかは重要ではない。会社のためにプライベートを費やすことをいとわないかどうかだ。当然のこととしてプライベートよりも会社のことを優先する経営者でないと、全幅の信頼を置くことはできない、というのが清原さんの考えだ。

ただし、清原さんは中堅以下の企業を専門に投資している。「プライベートでも仕事優先の姿勢が大切」というのは、経営者の役割が重要な中堅以下の企業に当てはまる話であろう。大手企業ではすでに事業の仕組みができあがっており、経営者の役割は小さい。かなり不埒な人物が経営者に居座っても、業績好調の状態が続くということがある。

つまり、企業全体で見ると、繰り返しになるが、経営者のプライベートと会社の業績の関係はほとんど関係ないということだ。

ところで、不埒な経営者と言えば、セクハラ大連発の我が古巣のENEOS。本日、ENEOSに関する私の記事が文春オンラインに掲載されるので、ご参考にしていただきたい。

 

(2024年3月25日、日沖健)