中小企業診断士制度に2つの提言

12月1日の政府の成長戦略会議で、中小企業診断士制度を来年3月までに改革することが決まった。私は1995年から25年に渡って中小企業診断士をやってきて、制度について色々と思うところがある。

以下の2つの提言をまとめて、昨日、中小企業庁に提出した。

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提案1・企業内診断士の転職支援制度の導入

提案2・企業内診断士の公的支援での活用

<提案1について>

ž   中小企業診断士制度の最大の問題は、資格取得者の7割が企業内にとどまり、ほとんど活動していないこと。

ž   大企業で働く企業内診断士が経営人材として広く活躍してもらうために、転職支援制度を導入し、中小企業への転職を促す。

ž   転職支援制度は、「中小企業診断士が中小企業に転職した場合、受け入れた中小企業に最大5年に渡って前職と現職の給料の差額を支給する」といった制度設計にする。

<提案2について>

ž   また、企業内診断士に公的支援を中心的に担ってもらう。そのために公的支援機関は、原則としてプロコンの専門家登録を認めず、企業内診断士を起用することとする。

ž   企業内診断士の資格更新のための実務従事ポイントは、公的支援の従事(または経営診断)で獲得するものとする。実務従事案件などグレーなポイント獲得を禁止する。

ž   なお、提案2は、企業内診断士の活用とともに、プロコンが公的支援に頼らず自分で顧客開拓することを促し、プロコンの質が上がることも狙っている。

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 ところで、日本では企業がコンサルタントを活用することが一般的ではなく、日本企業のコンサルタント利用金額は、アメリカ企業に比べて1ケタ小さいと言われる。

日本でコンサルタントが普及していない原因として、企業が自社のリソースで問題を解決する自前主義がよく指摘される。と同時に、公的支援による民業圧迫も、日本のコンサルティング業の発展を阻んでいると思う。

日本では国がさまざまな中小企業支援施策を講じており、中小企業は公的支援でただ同然の価格でコンサルティングを利用できる。そのため、中小企業はお金を払って民間のコンサルタントに起用しようという発想にならない。コンサルタントの需要が増えない。

また、公的支援の報酬は1日2万円とか異常な低価格で、コンサルティング市場で価格破壊を起こしている。コンサルタントが公的支援の分野では十分な収入を得るのは難しいので、とくに収入の高い大手企業に勤務する企業内診断士は、独立してコンサルタントになることを躊躇する。コンサルタントの供給も増えない。

今回の中小企業診断士制度の改革では、企業内診断士を経営人材としてどう活用するかが焦点になっている。ただ、それだけでなく、日本でコンサルティング業を発展させるような大胆な改革を期待したいものである。

 

(2020年12月14日、日沖健)